心掛けているのは、ありがとう、ごめんなさいをちゃんと言うこと

 今の僕の仕事、クリエイティブディレクターとして大切なことは、チームで丁寧に物事を進めることです。その本質はコミュニケーションの仕事で、進捗を聞いて、ひとつの方向に向かっているな、みんな同じ足並みで進んでいるなと確認したり、ズレがあれば調整すること。

 そのために心掛けているのは「ありがとう」と「ごめんなさい」をちゃんと言うこと。自分が間違っていたり、謝るべき人には、相手がどんなに自分よりも若い人でも「ごめんなさい」と言うようにしています。基本は全員「さん」づけです。仕事をするメンバーの中では自分が最年長なので相手は緊張するに違いないと思うんです。普通にしゃべっても圧がかかりそうなので、そうならないように配慮しています。

 50歳を過ぎて思うのは、ファッションは思いやりだってこと。目上の方にお会いする時にはきちんとスーツを着る。女性や若い男性と会う時には会話が弾むような服装をしていく。結局装いとは、お会いさせていただく人や場所などに対する思いやりや敬意であるべきだと思います。堅い言い方をすればTPOに合わせること。こういった考えも洋服から学んできたことです。

ファッション業界から離れようと思ったことは1ミリもない

 若い頃からファッションに助けられましたし、その思いは今も変わりません。むしろ、その存在価値は僕にとっては大きくなる一方なんです。だからこの業界から離れようと思ったことは、一度も、そして1ミリ足りともないですし、生涯にわたって服に携わる仕事をしていくのだろうなと思います。

 ナノ・ユニバースのクリエイティブディレクターとしての仕事を始めた今、これまでの自分を振り返って感じることはまだまだファッションの最前線に身を投じるべきだということです。そうして燃えるように生きる中で、何かを愛すべき後輩たちに渡すことができたら本望ですね。僕がファッションに関わるさまざまなカルチャーから多くのことを学んできたように、託すものを作ることができれば幸せなことなんだと思います。

 クリエイティブディレクターは寿命が縮んでいるんじゃないかってほど毎日大変ですけど(笑)。こんな面白いことってないですよね。

ナノ・ユニバース

https://store.nanouniverse.jp/

2022.04.09(土)
文=石川博也
撮影=杉山秀樹