ガラッと生活が変化した30代

――20代前半から『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の海外ロケで忙しくされてきたイモトさん。生活のペースを整えるのは、かなり大変だったのではないですか?

 すごく大変でした。20代は月の半分以上海外にいて、ブラジルから24時間かけて戻ってきてから、今度はヨーロッパへ行く……。そんな生活だったので、時差もめちゃくちゃで。現地に行くと移動時間を利用して食べなきゃいけないので、お昼は大体ファストフード。

 仕事を成立させなきゃっていう気持ちでいっぱいいっぱいで、体のケアもあまりできていなくて……。今思えば、わたしの体、ごめんなさいって思います。けど、元々体力もありましたし、なにより元気だったので、20代はそれでもやり過ごせていたんです。

――そんな生活を続けていると、冷蔵庫の食べ物の賞味期限が切れてしまう、みたいなこともありませんでしたか?

 そうなるから、冷蔵庫には何も入ってなかったです。ごはんを食べずに、栄養ドリンクに頼りっぱなしで1日3~4本飲んでいて。そこから30歳くらいの時ですかね? 生活というものに興味が湧いてきたんです。

――何かきっかけはあったんですか?

 当時出会った人の影響だったのかなぁ。わたし、影響されやすくて、出会った人が素敵だとこの人はこういう生活してるんだとか、こういうものを食べてるんだとかって、すぐに憧れてしまうんです。

 歳を重ねて健康の話題も増える中で、いろんな人の話を聞いたことが、少しずつ生活全体を見直すきっかけになっていたような気がします。

 あと、30歳を機に家を買ったんですよ。広くなったキッチンを素敵にしたかったから、いろいろと一新しようと思って、自炊まではいかないですけど土鍋でご飯だけは炊くようにしたんです。おかずは人からいただいたり、買ったりして。

生活を楽しく丁寧にするアレコレ

――土鍋でご飯を炊くって、すごい変化ですね。

 土鍋で炊くと、すっごくおいしいんですよね。そこから、キッチン用具とかベッドとかに興味を持ち始めて。だんだん生活を整えていくうちに、自分に合うものが知りたくなったんです。

 ある時、「わたし、この500円のビニ傘を何本買ってるんだろう?」と思って。ビニール傘だと愛情がないからすぐになくしてしまう。だったら、一瞬高いと思うけど長く使える傘を買ったほうがいいなと思って、いい傘を持つようにしたんです。

 あと、以前はコンビニが近くにないと絶対生きていけないと思ってたんですけど、1日1回行かなくても生活できるんだと気付いたりして。ちょっとしたことの連続なんですけど、いろんなことを体験するうちに大事なものがわかっていった感じですね。

 そこから結婚して、土鍋ご飯以外も作るようになりました。レシピサイトを参考にすれば、意外と自分でも作れるものなんですよね。

――そのほか、どんなアイテムに興味を持たれていますか?

 台所グッズやお掃除グッズが多いですね。奥平さんっていう男性がYouTubeの「OKUDAIRA BASE」にご自身の日々をアップされてるんですけど、動画で見せてる様子がすごく素敵で。

 毎日、お出汁を取ってご飯を炊くっていう丁寧な暮らしに憧れて、キッチン用具を購入したりしました。掃除にはもちろんルンバ的なものも使いますけど、ちょっとしたいい感じのほうきを買ってみたりして。

――お気に入りのアイテムを持ってると、掃除も楽しくなりますよね。

 そうなんです! やっぱりいかに楽しく暮らすかを考えることは、すごく重要だなと思っています。あと、松浦弥太郎さんの影響もすごく大きいですね。それこそ何十年も前から、すごく丁寧な暮らしを心がけている方で。

 WEBマガジンのコラムに松浦さんとお会いしたときのことを書いてるんですけど、実際にお会いしてもすごく素敵な方でした。

 向田邦子さんも素敵ですよね。向田邦子展にも行きましたし、向田さんが当時作っていた鍋料理を再現してみたりして。今の料理本と違って、ほぼ文章しかないのでざっくりとした分量しかわからないんですけど、これで合ってるかなと思いながら作るのが楽しいんです。

――いろいろな人やものから得たヒントを、生活の中へ積極的に取り入れているんですね。

 ひとつもオリジナリティないじゃん! って思われるかもしれないですけど(笑)。影響を受けたものが混ざりに混ざってわたしらしさが生まれていくのかな、と思っています。

2021.09.15(水)
文=高本亜紀
撮影=山元茂樹
スタイリング=奥田ひろ子
ヘアメイク=杉野加奈