日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」を中心に活躍しているお笑い芸人イモトアヤコ。先ごろ上梓した初エッセイ集『棚からつぶ貝』は、2021年1月現在6万3000部突破というベストセラーを記録し大好評だ。

 芸能界の親友や、一昨年結婚し新しく家族となった人へ、まるでラブレターのように紡いだエッセイは、笑いあり涙あり、心に染みてパワーをもらえると話題になっている。エッセイストとしての姿勢や、制作の舞台裏についてインタビューした。


やっちまったことをエッセイで昇華したい

―――好きなエッセイストや参考にしている書き手はいますか?

 さくらももこさんです。アニメの「ちびまる子ちゃん」は見ていたけれど、エッセイ『もものかんづめ』を読んで文章だけでこんな面白い世界があるんだ! と思いました。それから、松浦弥太郎さんのエッセイは日々の生活の参考にしています。あんなに丁寧には生きられないですけど(笑)。

 参考になっているのは、室井滋さんや阿川佐和子さんのエッセイです。「私もそうしちゃえばいいんだ!」とひらめきがあったんです。

 おふたりは「やっちまったなぁ」エピソードをよく書かれていて、それを参考に自分もこの本の書き下ろしで「やらかし年表」を書きました。エッセイで、自分で自分をほめるみたいになるのはどこか恥ずかしかったんです。私は逆に「やっちまった」話でやらかしたことを昇華したい。

 テレビではどうしても短い尺でインパクトのあることを言わなきゃと思ってしまう性なので、ささいな失敗などは伝えにくいのですが、文章なら長い尺を使って起承転結をもって話すことができます。室井さんや阿川さんのエッセイを読んでいて気づいたんです。

―――『棚からつぶ貝』は、2017年から2020年まで、雑誌CREAで毎月連載されたものをまとめた本です。「世界の果てまでイッテQ!」の撮影などのため、月の半分は海外で過ごされるそうですが、執筆はどのように?

 海外にパソコンをもっていってまで書いたのは3回だけ。多くは自宅や喫茶店にMacBookを持ちこんで書いています。そんな自分がかっこいいと思って(笑)。

 気に入って使っていたのは六本木の「文喫」。1,500円の入場料を払って本が読み放題、コーヒー飲み放題。ハヤシライスがおいしいんですよ。

 4、5時間ねばって1本2000字のエッセイを書き上げます。外に出かけると仕事のスイッチが入っていいですよね。

2021.01.16(土)
文=CREA編集部
写真=松本輝一