①別れた元カノへの恨み節とも取れる感情を吐露

 まずわかりやすいところでは、破局した恋人への恨み節とも取れる感情を吐露したこの2曲。(文中の【】は歌詞の引用部分です)

●B'z「傷心」(作詞・稲葉浩志、作曲・松本孝弘)

(1996年発売・ミニアルバム『FRIENDS II』より)

【求めあい過ぎるのが人情 花火のようにはじけ散って後遺症 どうして君は僕に微笑んでくれるの 一体どんな「つながり」を夢見ているの】

 別れたにも関わらず明るく接してくる元カノは、友達に戻ることを望んでいるのでしょうか。完全に切ることはせず自分にとって都合のいい関係を再構築しようとする、元カノの利己性が透けて見えます。

●Mr.Children「渇いたkiss」(作詞・作曲 KAZUTOSHI SAKURAI)

(2002年発売・アルバム『IT'S A WONDERFUL WORLD』より)

【ある日君が眠りに就く時 誰かの腕に抱かれている時 生乾きだった胸の瘡蓋がはがれ 桃色のケロイドに変わればいい 時々疼きながら 平気な顔をしながら】

 元カノがふとした瞬間に、自分の言葉や一緒に過ごした日々を思い出し、後悔することを望んでいる主人公。【ケロイドに変わればいい】という、ささやかな“呪い”をかける女々しさがたまりません。

②元カレや本命カレを想う女性への報われない恋心

 続いては、元カレを引きずる女性や本命が別にいる女性への、報われない恋心を描いたこの2曲。

●B'z「MY SAD LOVE」(作詞・稲葉浩志、作曲・松本孝弘)

(1994年発売・アルバム『The 7th Blues』より)

【何の理由で俺を選んだ 追憶にしろ忘却にしろ リリーフするだけじゃこっちもいい迷惑だぜwoman すでに恋愛感情はないと 君は安心して見せているけど ノスタルジックに想われるヤツの方が かっちょいいんじゃないの】

 交際中のカノジョが元カレのことを忘れられていないのではと疑念を抱きまくる男。心の傷が癒えるまでの一時的なつなぎだと自虐してしまう情けなさで、男の弱さを見事に表現しています。

●Mr.Children「others」(作詞・作曲 桜井和寿)

(2020年発売・アルバム『SOUNDTRACKS』より)

【テーブルの上の灰皿 アメリカ史紐解く文庫本 それはきっと彼のもの 「そろそろ行くね」って僕の 言葉を待っていたかのよう 無駄のない動きで君は そう僕に手を振る】

 想いを寄せる女性には本命がおり、その別の男の痕跡が残された部屋で体を重ねる二人。確かに愛し合ったものの、もう帰ってほしいと望まれていた【無駄のない動き】で、それが刹那的なものだったと思い知らされるのです。

③未練から生み出された矛盾を抱え諦観に辿り着く

 最後は、別れた元カノに未練たらたらな心情を、ある種の矛盾と諦観を持って綴っているこの2曲。

●B'z「僕の罪」(作詞・稲葉浩志、作曲・松本孝弘)

(1992年発売・ミニアルバム『FRIENDS』より)

【やめた煙草に手を出すように 君に電話をかけている僕は 居心地のいい場所だけを さがして歩くやつなのか こころの隙を縫いながら 言葉があふれてくる「会いたい」】

 嫌い合って別れたわけではなく、お互いのやりたいことのために別々の道に歩むことを決めた二人。にもかかわらず「会いたい」と言ってしまう自己矛盾。その意志の弱さこそが【僕の罪】なのでしょう。

●Mr.Children「Over」(作詞・作曲 桜井和寿)

(1994年発売・アルバム『Atomic Heart』より)

【いつか街で偶然出会っても 今以上に綺麗になってないで たぶん僕は忘れてしまうだろう その温もりを 愛しき人よ さよなら】

 恋心が甦ってしまうことを懸念して、さらに美しくなっていてほしくないと望む主人公。では【たぶん僕は忘れてしまうだろう】というのは、強がりなのでしょうか。未練が自身の感情をアンコントロールにし、矛盾を呼び込むのかもしれません。

 ――いかがでしたでしょうか? ライト層は知らないであろう、弱さや情けなさ剥き出しの男心を歌った、B'zとMr.Childrenに共通する悲恋ソング。こういった曲を聴きながら稲葉さんと桜井さんの対談を見れば、さらに奥深く感じられるはずです。

堺屋 大地(さかいや だいち)

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『文春オンライン』(弊社)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。
公式Twitter https://twitter.com/SakaiyaDaichi

2021.08.02(月)
文=堺屋大地