まあ、テレビなどのメディアでは、筋トレをすればスリムになるかのようなイメージが喧伝されているので、筋トレでやせると誤解してしまう人が多いのもやむを得ない。具体的な例を挙げれば、有名シェイプアップジムのテレビCMを見て、「自分もあんなふうにやせたい」と思う人も少なくないはずだ。
だが、あれは基本的に食事制限によってやせているのだ。
多くのシェイプアップジムでは、毎日の食事を徹底的に管理して制限することによって脂肪を落としている。ただ、食事制限だけでやせると筋肉まで落ちてしまうから、そうならないように筋トレをしっかりやりましょうというスタイルをとっている。つまり、「脂肪を落とせた」「やせられた」という“結果”を出すことができているのはあくまで食事制限のおかげであって、筋トレのおかげではないのである。
だから、「筋トレで腹をへこませよう」という願望を持つのはやめたほうがいい。「汗びっしょりかいてがんばれば、少しくらいは脂肪も減るだろう」と思っている人もいるかもしれないが、そういう希望的な観測も捨てたほうがいい。とにかく、筋トレ自体では脂肪は1グラムも減らないと考えるべきだ。
一応、脂肪が減らない理由を簡単に述べておこう。
その理由は、筋トレを行なうことで消費されるエネルギーが、脂肪ではなく糖分だからだ。筋力トレーニングのような無酸素運動では、体を動かすエネルギーとして、体内にストックされた糖分が使用される。
これらの糖分は普段グリコーゲンというかたちで肝臓や筋肉内に貯蔵されていて、わたしたちはこれらのグリコーゲンや、血中のブドウ糖を引き出して使うことで筋トレを行なっている。そして、この一連のエネルギー消費プロセスの中で脂肪が使用されることはほぼない。
すなわち、どんなに腹筋トレをがんばったところで、体内の糖分が減っていくだけで、脂肪が減ることはない。そのため、いくら腹筋トレをやっても一向におなかの脂肪は減らないのである。
2021.07.13(火)
文=清水 忍