「面倒だから」とか「疲れているから」といって、毎日シャワーだけですませていませんか?

 忙しい人や生活が不規則な人こそ、ぐっすり眠って疲れを癒やすためにきちんと入浴してほしいもの。

 そこで、前回に引き続き、眠りとお風呂の専門家で、公認心理師、SleepLIVE株式会社代表取締役でもある小林麻利子先生に、むくみやプチ不調などお悩み別の入浴法について教えていただきました。ポイントをおさえて良質な眠りを手に入れましょう。

» 第1回 睡眠と入浴の関係性
» 第3回 専門家のおすすめお風呂グッズ


おさえておきたい、熟睡につながる基本の入浴法

 前回、眠りの質を上げる基本の入浴法として、40℃のお湯に15分ほど浸かる完全浴をご紹介しましたが、入浴の仕方によっては効果が薄まることも。今回は、快眠のための効率的な入浴手順や目的別の入浴法を具体的にご紹介します。

<入浴時間について>

 良質な眠りには、いつ入浴するかも大切です。毎日バラバラの時間だと体内時計が整いませんので、何時に就寝するのかを決めておくこと。基本的には就寝時間の30分~1時間前に入浴することを目安にしてください。

 ただ、夏場は入浴で深部体温が上がった分が下がるまで、汗がひくのを待たなければいけないので、1~2時間前を目安に。

<水温調節の環境を整える>

 水温は40℃がベスト。なので、水温計は絶対にあったほうがいいです! たった1℃が眠りの質をガラッと変えるからです。

 お湯を入れている間に、温度が下がることもありますので、浴槽にフタをした状態でお湯を溜めましょう。ご家庭の環境によって、給湯器の設定が42℃で入る頃に40℃になる、ということであれば、そのように設定してください。

<入浴直前の準備>

 前回、自律神経の交感神経と副交感神経の働きについて説明しましたが、入浴後にあちこち歩き回って、交感神経を刺激するのはNG。快適な状態でスムーズに動けるよう、タオルから着替えまですべて脱衣所に準備しておきましょう。タオルは浴室から手が届く位置においておくことがポイントです。

 入浴中の発汗を見据え、入浴前にコップ1杯の水を飲むことも忘れずに。血流の流れがよくなり、温熱効果も高まります。また、メイク落としも入浴前にすませておきましょう。

【基本的な入浴手順】

1.かけ湯をする

 入浴前に、大きな温度変化に耐えられるよう、かけ湯は大事です。心臓から遠い、足や手から少しずつ心臓へシフトしていきます。いきなり心臓あたりから始めると、動悸につながる恐れもあるので、気をつけてください。

2.髪を洗う

 次に髪を洗います。冬場は体が冷えないよう、椅子に座って足湯に浸かりながら洗髪するとよいでしょう。頭皮の血流をよくすることも、脳の深部体温が下がりやすくなり、寝つきがよくなるという研究データもあります。シャンプーのとき、ブラシなどを使って頭皮マッサージをするのも効果的です。

3.40℃の湯船に15分浸かる

 心臓に疾患のない人なら、肩まで浸かる全身浴でリラックスして、湯船に浸かりましょう。テレワークなどで肩こりや目の疲れのある方は、15分の入浴時間の前半に、首まで浸かる完全浴を数分行うことをおすすめします。

 お風呂に入っている15分間、何をしてよいかわからない、ぼーっとすることが苦手という方は、防水対策をしっかりした上で、スマホを持ち込んでもいいでしょう。ブルーライトなどスマホの弊害があるといわれますが、それよりも楽しみながら深部体温を上げることのほうが、疲労の解消や快適な眠りにつながります。機種によって使用条件が異なりますのでご注意ください。

4.手早く体を洗う

 入浴後は、日焼け止めを塗った箇所や、皮脂の汚れの多い部分を軽く洗います。洗髪のときの界面活性剤で多少汚れが落ちていますし、湯船に浸かるだけでも皮脂や汚れを落とす洗浄効果がありますので、ささっとでOKです。

5.体を拭く

 事前に手に取りやすい場所においておいたタオルを浴室に持ち込んで、体を拭きます。副交感神経が優位なまま眠りにつくことが大切ですから、保湿剤を塗るなどのケアも浴室ですませるとよいでしょう。

 これが基本的な入浴手順です。

 まずは1週間だけでも続けていただければ、代謝や睡眠の満足度にうれしい変化を実感できるはず。手順には意味がありますので、一連の流れや方法を頭に入れて、ぜひ試してみてください。

2021.05.13(木)
文=大嶋律子(Giraffe)
イラスト=押本達希