腹筋をガチガチに固めるとパフォーマンスが下がる!?
腰痛の有無にかかわらず、私は、腹筋をあまりに硬くしすぎるのは考えものだと思っている。
いったいなぜか。ここは順序立てて説明することにしよう。
まず大前提として、腹筋をはじめとした体幹の筋肉は、あらゆる運動動作の基本となる部分だ。よく知られるように、柔道・空手・剣道などの日本の武道においては、体の中心である「肚〈丹田〉」に力を込めることを古くから重視してきた。
「肚」に十分な力が入れば、おのずと軸がしっかりして姿勢やフォームが整ってくる。そして、姿勢やフォームが整えば、よりスムーズに、より大きな力を出すことができるようになっていく。そのため、どんな動きをするにしても、腹筋に「グッと力を込められる状態」にすることが「基本のキ」となるわけだ。
たとえば、テニスでサーブを打つときを想像してほしい。強いサーブを打つには、ボールをラケットで捉える瞬間、腹筋にグッと強く力を込めなくてはならない。これができているのとできていないのとでは段違いで、腹筋に力が入っていない場合、腕の力だけでラケットを振っているようなフォームになって、ひょろひょろっとした弱々しいサーブしか打てなくなってしまう。
このように、わたしたち人間の体は、腹筋をはじめとした体幹の筋肉をしっかり働かせていてこそ、スムーズかつ合理的に筋肉を動かして、高いパフォーマンスを発揮できるようになっている。だから、日々のトレーニングで体幹を鍛え、しっかり力を入れられる状態にしていくことは非常に大切なのだ。
しかし──。
腹筋・体幹が重要だからといってあまりにガチガチに固めすぎてしまうと、逆に体の動きを落とすという“ざんねんな結果”を招いてしまうのである。
その理由は、ガチガチに固めてしまうと、常に力が入りっぱなしのような状態となり、突然大きな衝撃がかかったときなどに、その衝撃を逃がすための“逃げ場”がなくなってくるからだ。とくにアスリートの場合、ボディコンタクトなどによって途方もないインパクトが腰にかかってくることが少なくない。そういった場合、「力をスッと抜く」という動きで、かかった衝撃の力をうまく逃がさないと、インパクトをまともに喰らい、腰の状態を悪化させてしまうことにつながりかねないのだ。
2021.07.13(火)
文=清水 忍