東京を離れ、地方へ移住する人が増えているという。

 そこにはどんな暮らしがあり、どんな時間が流れているのか。憧れの海が見えるロケーションで眺望という最高の贅沢を生かす部屋づくりをした2軒のお宅を訪ねてみた。

 今回伺ったのは静岡県伊東市にある石丸寿美子さんのお宅、海辺のログハウスです。

» 気持ちの良い部屋の作りかた①


夜明けとともに自然に目覚める 海辺のログハウス

 海を望む丘に広がる別荘地。世代交代を繰り返し、今は東京を離れて定住している人も多いという。石丸さんは現在、平日は東京、週末はこの海辺の家の2拠点暮らし。

「もともと夫の祖父の古い家があり仲間や親戚がよく集まっていたんです。これからもみんなが集まれるようにと3年前に私たちで建て替えました。ログハウスに憧れがあり、いろいろ探した結果、森の中にあるような窓の小さいログハウスではなく、海沿いに似合う開口部の大きな北欧メーカーのものに。

 東京の家は住宅密集地にあるので空もあまり見えないし、夕方すぐ暗くなり、日中でも電気をつけることがあります。だからここは明るく開放的な場所にしたかった。最近はリモートワークが進み、平日もこの家で過ごすことが増えました」(石丸さん)

 テラスの向こうには海、吹き抜けの窓からは青い空が広がる。東京では考えられない開放感だ。

「窓は南向きだけれど、遮熱の省エネガラスにしたのと、風が通るので思ったほど暑くありません。夏でも夕方になると風が吹いて涼しく感じられるくらい。最初はカーテンをつけるつもりでしたが、なくても全然大丈夫」(石丸さん)

 大きく開けた窓からは途切れることなく、鳥のさえずりが聞こえてくる。天気のいい日は大島や神津島、新島や式根島などの伊豆七島がくっきりと見え、大好きな海の景色に飽きることがない。

「船が行き交う様子も楽しくて、ぼーっと船を見ていたら一日が終わっちゃった、みたいなことも。朝は鳥の声で夜明けに自然と目覚めますが、たまに泥のように眠ろう、って昼まで寝てしまったり。そんな『まいっか』、みたいな瞬間がいろいろあります」(石丸さん)

 20~30代は仕事に趣味に、とにかく忙しかった。この家にいると何ごとも頑張らない、そんなスイッチが入るのだという。

今回伺ったお宅は……
静岡県/伊東市 石丸寿美子さん宅


広さ 約167平米
間取り 2LDK+LOFT
家族形態 2人暮らし

2021.06.29(火)
Text=Yoko Maenaka(BEAM)
Photographs=Hirotaka Hashimoto

CREA 2021年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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