東京を離れ、地方へ移住する人が増えているという。
そこにはどんな暮らしがあり、どんな時間が流れているのか。憧れの海が見えるロケーションで眺望という最高の贅沢を生かす部屋づくりをした2軒のお宅を訪ねてみた。
今回伺ったのは静岡県御前崎市にある齋藤華乃子さんのお宅、海の見える家です。
料理しながら、食べながらこの景色が最高のスパイス
![南の窓の外に広がる海。この眺めを生かすために幅が広く枠の少ないサッシに。塩害を考慮してアルミではなく木枠。天井の連続した梁も視界が抜ける効果を生んでいる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/5/1280wm/img_f52993bf0b43d33f08747cbd10e76e16136700.jpg)
荒い白波が次々と寄せる岬。ウィンドサーフィンの世界大会も行われる海辺の高台に、齋藤さんの家がある。型通りの一般的な玄関はなく、北側のサッシの一部から中に入ると右手にキッチン、左手に曲線を描く収納棚、奥の南側の窓際にダイニングテーブルがあり、庭の向こうに青い海が広がっている。
![窓ぎわのダイニングテーブルが暮らしの中心。海を眺める特等席で、食事や会話を楽しんでいる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/1280wm/img_6a20c8cc73052f3c4558be861b1d369f217912.jpg)
![空間の片側は壁一面が収納棚。寝室やトイレ、浴室などプライベート空間につながる扉もある。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/4/1280wm/img_7487b084054672e29b76a5c7f82838fc107181.jpg)
この視界が抜ける50平米ほどの空間が夫婦2人の暮らしの場であり、週に5回開かれる「海の見える料理教室」にもなっている。
![収納棚の向かい側が壁付けのキッチン。教室は4人までの少人数制で、のびのびと料理できる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/1/1280wm/img_e1c32965a274538906204326bfc249d582207.jpg)
「本格的に自宅で料理教室を始めたいと思っていたころ、ちょうど住みたかった場所で土地を売ってくださる方がいて。海が見える環境を生かし、自然とつながっているような家で、生徒さんに空間まで楽しんでもらえる場にしたいと、建築家にお任せしました」と齋藤さん。
![料理を仕上げてテーブルへ。教室ではパン、ケーキ、料理と幅広いレッスンを行っている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/0/1280wm/img_9060215ff3fcffeafa86f6c8c78ea82895332.jpg)
モルタルの床からも、美術館のようなパブリックスペースのニュアンスを感じられる。
![ダイニングから続く調理スペース。海を眺めながら料理ができるなんて最高!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/1280wm/img_a71a2fb2df691635d3dbac6b49e82431138924.jpg)
「朝起きてカーテンを開けて景色を眺め、レッスンが終われば夕方また海を眺めて。仕事とプライベートが同じ空間でも、一日の始まりと終わりにこの景色を見るだけで、気持ちがリセットできるんです。
季節や日によって窓の外の海の色も木々の色も変化して飽きることがありません。自然の美しさも厳しさもすぐそばで感じることで、日常的に『幸せだな』と実感できるんですよね」(齋藤さん)
以前の2LDKのアパートでの持ちものは引っ越す前に半分に減らし、住み始めてからさらに3分の1を減らした。
![壁掛けのテレビの下には白い台が。人が集まったときのベンチにしたり荷物置き場にしたりと多用途。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/0/1280wm/img_d06c8099a10241907646c071c576934f57015.jpg)
「この空間にものを置くのがもったいなくて。目に入るものがクリアになると思考もシンプルに、クリアになるみたい。豊かさは、決してものではないんだな、ということも、ここに住み始めてから気づいたことです」(齋藤さん)
大事にしたいものが少し変わる。それもこの家が教えてくれたことだという。
今回伺ったお宅は……
静岡県/御前崎市 齋藤華乃子さん宅
広さ 約76平米
間取り 1LDK
家族形態 2人暮らし
料理教室 tetote
http://tetote-cooking.com/
Instagram:@tetote_kurinoko
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
2021.06.28(月)
Text=Yoko Maenaka(BEAM)
Photographs=Hirotaka Hashimoto
CREA 2021年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。