この作品は、すべてを肯定してくれる人間讃歌の映画
――華子と美紀が出会うシーンは、ともすると修羅場になりかねないシチュエーションですが、女性同士の対立や自尊心の削り合いから距離を置き、静かに向き合うふたりの姿が印象的でした。おふたりは、階層や性別などの分断に直面したことはありますか? 直面した場合、どう戦いますか?
門脇 私はちょっとそういうことに疎くてですね……。「なんでこの人はこういうことを言うんだろう」と感じたことがあまりなくて。ぼーっと生きてます(笑)。
水原 いいと思う(笑)。私はやっぱり「女性だから〜」と言われる場面はありますね。相手からしたら悪気がなかったり、ジェネレーションギャップだったりする場合もあると思うので受け止めることもあるし、割と受け流しちゃいます。
「これが正義だ!」と自分の意見を振りかざすことはすごく暴力的だし、それこそが分断を生むと思っていて。違う考えを持つ人間同士がどこまで歩み寄って寛大になれるかが、すごく大事だと思っています。もちろん、さすがに発言がいきすぎていたり、そのままの環境では仕事ができないと感じたときは、自分の考えを伝えますけどね。
門脇 私は階層についても「場違いな所に来ちゃったな」と思うことはあるけど、それって自分にとってあまり楽しいと思えない場所なわけじゃないですか。だから次に誘われても「もういいや」って思って行かないだけ。おのずと自分がぬくぬく生きていける環境を日々作り上げている感じですね。背伸びして何かを掴もうとは思わないタイプなので、そう言う意味で美紀に憧れます。きっと私にはできないから。
水原 私は海外に行ったときに感じることはありますね。カンヌ国際映画祭に行ったときなんか、カルチャーのギャップがありすぎて落ち込みそうになったり。でもそういうときは「新しい世界を見させてもらえた」と思うようにしています。どんな状況でも、笑い飛ばせる強さは欲しいなって思うから。
――見る人によって共感するキャラクターは違うと思いますが、この作品で伝えたいことは?
門脇 他人から自分がジャッジされたり、カテゴライズされたり、逆に自分も無意識に誰かを分類して認識していたり。「〜系」と形容する言葉も、世の中に当たり前のように溢れていて、私自身も誰かに分類された枠組みの中で、勝手に自分自身を縛ってしまうようなことってたくさんあると思います。そういうときは、いつも本当はどうありたいのか、と俯瞰して物事を決めたり行動するようにしています。
この作品は、そういう呪縛みたいなことから解き放ってくれて「もっとあなたらしさを認めてくれる人や環境はいっぱいあるよ」と肯定してくれる映画だと思います。ひと言で言うのは難しいけど、もう、人間讃歌の映画なので。
水原 その通りですね。絶対に交わらないふたりが出会うことによってその瞬間だけ呼応しあって、お互いが前に一歩進むことができる。それって人間の本当に美しい部分だと思うんです。女の子だけじゃなく、みんなが共感できる作品だと思います。
2021.02.18(木)
文=松山 梢
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=吉田 恵(門脇)、小蔵昌子(水原)
へア=shuco(3rd/門脇)
メイク=石川奈緒記(門脇)
ヘアメイク=白石りえ(水原)