一枚絵のイラストを出発点に手探りで「マンガのようなもの」を作って

――ふせでぃ先生はどのようなきっかけでマンガを描き始めたのでしょうか。

ふせでぃ マンガを描こうというつもりは当初まったくなくて。いろんな創作の中で、自分とは1番遠いと思っていました。きっかけは、イラストをインスタに上げたことですね。女の子のイラストを描くのが好きで。

――具体的にはイラストレーターを目指すつもりで?

ふせでぃ そうですね。イラストをインスタにアップして、SNSでフォロワーが増えていったら何か結果につながるかなと思っていて。バイトをしながらイラストをせっせと上げてました。女の子のイラストだけじゃなく、男の子も描いてみたら反応が多くなってきて。

 でも、結局はフォロワーが増えても「自分の作品です」と言えるようなものがないことに気づいて虚無モードになったんですよ。この先に何があるんだろうと……そんな時にカドカワさんから「本を出しませんか」と声をかけていただけて。

――そのお話が来て初めて「イラスト」をもとに「マンガ」を作って。1冊目の単行本『君の腕の中は世界一あたたかい場所』が生まれたわけですね。

ふせでぃ 正直、あれはマンガと呼べるのかわからないですけど。インスタに上げてたイラストにコマを足して。一応キャラも詰めて物語の形にはしましたが。マンガ風にしたイラストなのか、イラスト風のマンガなのか……。欄外にポエムをつけたりしてるし。

――私はマンガだと思って読みましたよ。

ふせでぃ そうですか?? それまでちゃんとしたマンガを描いたことがなかったし、そもそもマンガもそんなに読んでいないほうなので。

――そうじゃないかなと思ってました。でも、だからこそマンガばかり読んできた私からすると、「新鮮なマンガだ」と感じる表現が多いです。

ふせでぃ 好きなマンガはあるんですよ。『NARUTO』とか『進撃の巨人』とか。『HUNTER×HUNTER』『20世紀少年』とか大好き。

――少女マンガは?

ふせでぃ 全然読んできていなくて。『フルーツバスケット』とかは読みましたが……。少年誌や青年誌のマンガのほうがまだ読んでますね。

――触れていないのは王道の恋愛マンガや、サブカルチャー的なテイストの作品あたりでしょうか。

ふせでぃ はい。でも、1冊目の本を出したことで、「もっとマンガを勉強して描いてみたい」という気持ちが芽生えて。編集さんにもいろいろ勧めてもらって。大好きになりそうな漫画家さんはたくさんいるんですけど、逆に読んで影響されてしまうのが怖いところもありますね。

――今日は興味深いエピソードをたくさん聞かせていただき、いろいろ納得しました! ふせでぃ先生がこれからどんな主人公、どんな物語を描いていくのかとても楽しみです。

ふせでぃ 男の子主人公とかも描いてみたいですね。今マンガを描くことがすごく楽しいので、いっぱい描きたいです。なんだかマンガを描いてないと落ち着かないみたいになりつつあります。いろんなことをお話ししましたけど、作品の受け取り方はそれぞれだと思っています。私の作品から、少しでも何かを感じてもらえたらうれしいです。

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ふせでぃ

七夕生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学卒業後、イラストレーターとして活動する。切ない恋愛に葛藤する女の子のイラストをSNS上で発表し、多くの支持を得る。現在は漫画を中心に活動中。漫画作品に「君の腕の中は世界一あたたかい場所」(KADOKAWA)、「全部失っても、君だけは」(講談社、漫画アプリ「Palcy」連載)がある。


コミックエッセイルーム 「ふせでぃ」さんのページ
https://crea.bunshun.jp/list/comic-essay/author/ふせでぃ

『明日、世界が終わるかもなので、本日は帰りません。』

文藝春秋
著者 ふせでぃ

コミックエッセイ『明日、世界が終わるかもなので、本日は帰りません。』の著者
ふせでぃさんにインタビュー

2020.09.22(火)
取材・文=粟生こずえ
撮影=鈴木七絵