ばっちゃの笑顔がお出迎え この地に受け継がれる郷土の滋味
東には北上山地の山脈が連なり、馬淵川が南北に流れる自然豊かな二戸。
冷涼な内陸の丘陵地という限られた条件のなかで、人々はさまざまな工夫をしながら暮らしてきました。
古くから冷害に悩まされた地ながら、その風土に合った蕎麦などの雑穀類や小麦、豆類などを使った料理、おやつもバラエティ豊かです。
「佐太郎茶屋」は、地域のお母さんたち15人ほどからなるグループ「よりゃんせ金田一」が運営。地元のさまざまな文化に触れられるコミュニティです。
お茶の間のようなコミュニティスペースとキッチンがあり、郷土料理のランチ会(月1回)や、ワークショップなどを開催しています。
この日は、郷土のおやつ「てんぽ焼き」の作り方を実演&体験。
「てんぽ焼き」は、天保の大飢饉のころに生まれた生活の知恵。地粉に熱湯(古くはごく薄いお粥)を加えてよく練り、南部鉄器製の焼き型で焼いたものです。トッピングのごまやくるみも地元産。
このほか、地元で長年愛されている南部せんべいの専門店があったり。目立った看板もない小さな食品店の片隅で、手作りの飴菓子を見つけたり。
「藤原商店」は、昭和25年創業の製菓店。いまも機械を使わず、昔ながらの製法で飴を作っているそうです。
二戸駅前の蕎麦店「きんじ」では、郷土料理「そばかっけ」が食べられます(要予約)。
鍋に出汁を沸かし、豆腐や野菜を煮ながら、三角形の板状の「そばかっけ」を茹で、にんにく味噌をつけていただきます。
そばを切るときに出る端切れ(かけら)を使うから、「そばかっけ」という説や、この地方の方言で「さぁ食べてください」と言う意味の「かぁ けえ」からきているという説も。
玄そばは二戸の在来種「岩手中生(なかて)」を使用。厳しい自然環境の中で育まれた先人の知恵が、今では立派な料理のひとつとなり、現代の家庭でも親しまれています。
2020.06.21(日)
文=伊藤由起
取材協力=岩手県二戸市産業振興部商工観光流通課