感染のスピードは 予想以上に速く感じられた
アメリカでは3月13日(金)に国家非常事態が宣言され、ニューヨークでは12日(木)には500人以上の集会が禁止、カーネギー・ホールやメトロポリタン歌劇場、ブロードウェイが次々とクローズ。
デパートや5番街のブランド店もすべてクローズ。盗難を恐れる店舗は、ショーウインドウに板を打ちつけるような自衛をしている。
苦境に陥ったのが、美術館や劇場だ。メトロポリタン美術館は休館して今後数カ月で1億ドルの損失となると見込まれ、職員の解雇も視野に入れられている。
またメトロポリタン歌劇場は今季の公演をすべて打ち切ったが、チケットは払い戻し可能。これによって6,000万ドルの損失が見込まれている。
一時的な閉館に伴い、過去のライブビューイング作品を毎晩無料でストリーミングしてくれるというファンサービスを見せてくれたが、4月以降は解雇されたオーケストラ、合唱団、作業員の給料は支払われないという。同団のピーター・ゲルブ総裁自身の給与支払いもすべて見送られることとなった。
レストラン、バー、カフェはテイクアウトとデリバリー以外は、すべてクローズ。
テイクアウトにできないような高級レストランは、早々と無期限クローズに踏みきった。
たとえばセレブシェフのダニー・メイヤーが率いるユニオンスクエア・ホスピタリティ・グループはレストランを閉めて、約80パーセントの従業員を解雇。
3月17日(火)には、すべてのレストランとバーが、デリバリーとテイクアウトのみ許可という業態となった。
スターバックスの店内からも椅子がすべて撤去、テイクアウトのみ受けるスタイルへと変化した。
アメリカ労働省によると3月21日(土)までの新規失業保険申請数は約328万件に達し、過去最多に。
上院では、2兆ドル以上の大型経済対策法案を可決して、家計への現金給付や企業支援に取り組む予定だ。
とはいえ、レストランで働く人たちや、ネイルサロンで働くスタッフたちの多くはソーシャル・セキュリティ・ナンバー(社会保障番号)を持たず、失業保険を申請できない。これから数カ月の間で貧困者数の激増が予想できる。
このように経済への影響は懸念されるが、ただ言えるのは、新型コロナウイルスの感染速度は、ニューヨーク市民の誰もが予測できなかったほどなのだ。
はじめは医療体制など問題があったかもしれないが、対応が後手になると、恐ろしい数の人が犠牲になる。
大都市は、どこもこうした危険にさらされている。
公共機関やスーパーなど ライフラインは継続
ロックダウンというのが、実際に市民の生活にとってはどのような状態かというと、引き続き「エッセンシャル」と規定されたビジネスは継続している。
「エッセンシャル」とは暮らしの根幹に必要なビジネスのことで、公共交通、警察、郵便、銀行、テレコミュニケーション、スーパーマーケット、食料品店、ドラッグストア、チャイルドケア、アニマルシェルターなどだ。
スーパーや食料品店は今まで通り営業しているのだが、店内に入れる人数の制限があり、外で並んで待つ人たちも6フィートの距離を保つようにしている。
食料品サプライチェーンは従来通りに機能しているので、商品を買いこめば、自宅に待機していられる。
一時期、スーパーの棚からパスタや冷凍食品などの食料が一斉になくなった時ほど切羽詰まった状態ではなく、生鮮食料品は豊富だ。
人気のスーパーマーケット、ホール・フーズ・マーケットやトレーダー・ジョーズでは、開店する1時間前に、60歳以上の人たちに優先的に買えるタイムゾーンを設けている。
マスク、トイレットペーパー、消毒液は瞬く間になくなったが、いまだに供給されていない。
2020.03.31(火)
文=黒部エリ