令和に徹底したいモットーは
“自分の心に正直に”
「初舞台にしては整いすぎと言いいますか、赤ちゃんにいきなり一流料理を食べさせるような(笑)。とても贅沢なことと感じています」
ブルゾンちえみさんは、この夏、挑戦する舞台について、そう発言した。ケラリーノ・サンドロヴィッチの、第43回岸田國士戯曲賞を受賞した『フローズン ビーチ』を鈴木裕美が演出。出演は女優4人のみ。ウィットたっぷりに1980~2000年代の世相を投影させながら、女たちのドラマを描いた名作だ。
「少人数なので責任は重いですし、カロリーも必要になるでしょうが、負荷がかかるほど、恐ろしいほどの達成感や幸せを感じられると思っているので、ワクワクしています」
達成感は何にも勝る喜び
頑張ることの快感は、子どものころから幾度も体験していた。
「達成感を得たいんですよね(笑)。学習教材を溜め込んで『これを一気にやるぞ!』とか、図書館から10冊本を借りてきて『全部読むぞ!』とか(笑)。わざと自分に負荷をかけていました」
そんな性格だから、大学を中退して以降、道を見失い、無気力に陥った数年はきつかった。
「何に向かって頑張ればいいのかわからない。そんな自分が嫌で、しんどくてたまらなかったです。劇団に入ってみたり、歌の勉強を始めたり、頑張れることを手当たり次第に探しました。もし、あのまま大学を卒業し、予定通り教師になっても、遅かれ早かれ行き詰まったと思います」
そうなってしまった原因は、敷かれたレールに疑問を抱かずに歩いてきたからだと振り返る。
「自分の本当にやりたいことと向き合わずに、『(私の人生は)こういうもの』と思い込んでいたんです」
本当の気持ちに気づいてしまったら、周囲との軋轢も少なからず生じる。そう思って目を瞑り、やりすごしている人は大勢いる気もする。
「考えないほうが楽なのかもしれませんが、そうすると状況は変わらない。私は、違和感を抱いたら、向き合って方向転換したいんです」
「できるだけ自分の心に従う」というのがモットー。
「自分だけが我慢をすればスムーズかなと本当の希望をのみ込むこともあるのですが、そうしてしまうと、体調を崩す。ストレスで太ってしまうので(笑)。令和からは、我儘を言わせてもらうことにしました!」
ブルゾンさんの憧れはウィル・スミス。世界的エンターティナーであり、社会問題にも目を向けている姿が理想的。自身も小学5年生のときに環境問題に目覚め、「地球を救うのは私!」という意気込みで、紙のリサイクルや電力や水の節約に励み、クラスメイトに注意を促していた。
「今回の人生だけでやりきれるかわかりませんが、やらなきゃと思っていることはたくさんあるんです」
理想の未来に向かって、あふれんばかりの熱を放ち続けてほしい。
ブルゾンちえみ
1990年生まれ。岡山県出身。2017年「ぐるナイおもしろ荘」(日本テレビ)で優勝し、人気者に。「24時間テレビ」ではマラソンランナーも務めた。女優としては、ドラマ「人は見た目が100パーセント」(17 フジテレビ)、「サバイバル・ウェディング」(18 日本テレビ)に出演。映画『ジオストーム』では吹き替えも。
舞台
KERA CROSS 第一弾
『フローズン ビーチ』
1987年~2003年、リゾート・アイランドで繰り広げられる女たちの密室劇。
公演期間 2019年7月31日(水)~8月11日(日)
場所 シアタークリエほか全国公演 ※プレビュー公演あり
[お問い合わせ先]
東宝テレザーブ
電話番号 03-3201-7777
Column
C&C インタビュー
今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。
2019.07.03(水)
文=黒瀬朋子
撮影=榎本麻美
スタイリング=奥田ひろ子