年に2度の太陽の祭典に
大群衆がヒートアップ
東に向かって建造されているアブシンベル神殿では、2月22日と10月22日の年に2回、朝日がまっすぐに神殿へ差し込み、最も奥まった至聖所の神々の像を照らし出す。
この特別な朝日を迎える2日を、“ラムセスデイ”と呼ぶ。
ラムセスデイの朝日を目指し、約300キロ離れたアスワンからアブシンベル神殿へ出発したのは、深夜1時頃。テロ対策のため、数台のバンや大型バスで隊列を組み、その前後を軍の警護車が護衛する。特別な夜明けを迎える興奮で、誰もが浮足立った様子だ。
アブシンベル神殿に到着したのは、まだ夜が優勢な午前5時頃。それでも遅れを取ったようで、ゲートはすでに人々で沸き返っている。
ゲートを越えて暗闇の中をしばらく歩くと、神殿前はさらに大群衆でごった返していた。皆少しでも前へ、前へと押し合い、隙間を見つけては身体をねじ込んでくる。太陽神からの祝福を勝ち取るために、誰もが必死だ。
ぐりぐりと人垣に隙間を作っては入り込み、いい場所を確保したところで、振り返ると、朝日の気配が背後のナーセル湖ににじみ始めていた。鳥たちが水面近くを飛んでいく。空がうっすらと明るくなり始めたら、押し合いへし合いはさらにヒートアップ。
7時頃にようやく神殿内に突入、ご来光が至聖所の神々の彫像に差す光景を、大列柱室の先頭近くで見ることができた。
ほの暗い神殿内で、彫像のみに柔らかな朝日が差し、陰影が浮かびあがる。
4体の神々のうち、右から太陽神のラー・ホルアクティ、神格化されたラムセス2世、王の守護神アメン・ラーに朝日は当たるが、左端の闇の神プタハだけは光に触れないよう建設されている。
神殿が建造されたのは紀元前1250年頃。この設計を計算で導き出した、当時の暦の知識に驚く。
神殿から出ると、広場では楽器を打ち鳴らし、一群が踊っている。テレビ中継も数カ所でインタビューを行っている。太陽が昇るにつれ、光と熱がどんどん強くなってくる。
その頃になると、先ほどまでの熾烈な場所取りがうそのように、和やかな祝祭の空気に変わっていた。
この年に2度のイベント、朝日が、祀られている神々の像に当たることで、太陽神と結合し、パワーアップすると考えられているそうだ。朝日を受けて、自分までも力が満ちた気がしてくる。
【取材協力】
エジプト政府観光局
人生観、変えてみる?
偉大なるエジプト!
2018.11.08(木)
文・撮影=古関千恵子
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