「手紙」と『100万回生きたねこ』

──2018年6月に配信リリースされたシングル「手紙」に“百万回も生きた 猫のように”という歌詞があります。絵本の『100万回生きたねこ』とは何か関係があるんですか?
山内 故郷や今会えない人に対して思うことをそのまま書いた感じの歌詞なんですが、そこに“百万回も生きた 猫のように”って入れたのは、『100万回生きたねこ』が、人と人との愛情のような普遍的なことを表現している物語だと思ったからです。「誰かと寄り添っていたいけど、結局他人と他人なわけだし……」というようなことを考えていた時に、この本がパッと頭に浮かんで。「最後の最後に大事なことに気がついて、大泣きして、やっと死ねた」みたいな話じゃないですか。書きたかったのはまさにこういうことだなと思って。

──歌詞を書いている時にそんなふうにパッと思い出したということは、子どもの頃に読んだこの本が、よほど強く印象に残ってたんでしょうね。
山内 そうですね。父が歯科医をやっていて、待合室に絵本なんかの児童書がたくさんあったのをすごく読んでいて。その中でも特にこの本が、自分の中に残っていたんだなと思いますね。

『100万回生きたねこ』佐野洋子 文・絵
1977年に出版され、現在までで累計220万部以上発行された絵本。一匹の猫が輪廻転生を繰り返した末、大切なものにたどり着く物語。映像化、ミュージカル化もされた。
講談社 1,400円
2018.10.13(土)
Text=Shinji Hyogo
Photographs=Akari Nishi
Styling=Takashi Nii
Hair & make-up=Kanae
CREA 2018年11月号
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