光石さんの故郷の黒崎には
強烈に惹かれる何かがある(横山)
横山 北九州出身なら、福岡を中心に盛り上がっためんたいロックは?
光石 ちょうど僕が上京した後に福岡からルースターズやザ・ロッカーズなどのめんたいロックと呼ばれるバンドが出てきたんですよ。同級生は聴いていましたけど、僕はあまり聴いてなかったですね。
横山 北九州は大好きな街です。
光石 北九州と博多には大きな違いがあるんです。やっぱり博多は都会なんですよね。こっちは工場地帯の労働者の町で。
横山 デトロイトや川崎に近い?
光石 そうですね。川崎に行った時、ビックリしましたもん、雰囲気がすごく似ていて。
横山 昔からクールスをずっと応援してくれている人たちが北九州の黒崎にいたんですよ。
光石 そこです! 僕が生まれ育ったのは黒崎という街です。
横山 そうでしたか。今だったらコンプライアンスの問題になりそうな人たちが醸すちょっとヤバい緊張感が漂う空気があって。でも、クールスのジェームス(藤木)さんと僕は黒崎に、何か強烈に惹かれるものを感じました。音楽でいえばガレージパンクの匂いがする。
光石 分かります。リリー・フランキーさんは小倉出身ですし。松尾スズキさんも北九州ですね。
横山 スゴイ! 逸材を輩出していますね。
光石 黒崎の町も以前よりは活気がなくなっていますね。スペースワールドも閉園しちゃいましたし。
横山 スペースワールド! CKBでカウントダウン・ライブをやりました。ああ、北九州、黒崎。なるほど、通じ合うものがあるはずですね。
光石 僕にはクールスやシャネルズが都会的でシャレたものに見えたんです。山下達郎さんを知ったのもクールスの『NEW YORK CITY N.Y.』(79年)でした。
横山 達郎さんのプロデュースによるニューヨーク録音のアルバムですね。
光石 それが素晴らしくて、初めて達郎さんの存在を知るんですが、最初は「あの人、長髪だよ。リーゼントしてないよ」なんて疑ってたりして(笑)。
横山 でも、達郎さんはものすごいオールディーズマニアですからね。
光石 そういうことを田舎者だったから知らなかったんですよ。それで山下達郎さんも聴くようになるんです。
横山 クールスのヴォーカリストのピッピさん(水口晴幸)のソロ『BLACK or WHITE』(80年)も達郎さんプロデュースでしたしね。
光石 あれもメチャクチャかっこよかった。
横山 勝新太郎さん監督・主演の刑事ドラマ「警視-K」にはピッピさんも出演していたし、エンディングテーマは達郎さんの「My Sugar Babe」でしたね。ディスコシーンでは「BOMBER」がかかったりして。
2018.09.15(土)
構成=佐野郷子
撮影=鈴木七絵
スタイリング=下山さつき
ヘアメイク=山田久美子