予約困難店の味が
予約なしで堪能できる!

 初日のランチは「笠庵」で。こちらは2004年にオープンし12年経った今でも予約困難店である恵比寿「賛否両論」の笠原シェフが監修している。おつまみからちょっとしたコース料理の笠庵膳、お子様弁当まであり豊富なメニューは老若男女で楽しめる。

レストランの中で唯一11:00からラストオーダーの21:30まで通しで営業しているので、いつでもお風呂上がりの一杯から、がっつり食事まで可能。

 自慢は一頭買いしている松阪牛。カルビ重(漬物、汁付き 2,500円)やハンバーグ(1,550円)が人気。他にも柑橘の皮を餌にしている伊勢真鯛や、地元の菰野豚など三重の食材がふんだんに使われている。テーブル席と畳席があり座椅子も用意されるなど心配りも嬉しい。

二川原(にがわら)貴也料理長におすすめを教えていただき、まずはトマトサラダから。笠原レシピによる野菜のコクとうまみが効いた自家製ドレッシングに唸る。

 コロッケはジャガイモの存在感があり、とろんとしたクリームが絶妙。衣もサクサクでいつまで経っても油っぽくならない。ソースをつけなくても十分美味しくいただける。

「賛否両論 笠原特製 ポテトクリームコロッケ(800円)」は笠原さんの実父のレシピを再現。世界中探してもここだけでしか食べられない。

 まあるくこんもり盛り付けた白飯が可愛らしい「鯛茶漬け」は、初めはお刺身で、次に白飯の上に鯛をのせて、そして最後にだしをかけていただく。だしの優しさが体中に沁み渡りホッと和む。

笠原さんイチオシの「鯛茶漬け(1,300円)」。柑橘の皮を餌にしているので脂がキレイな鯛と評判だ。
昆布だしに炙った鯛の中骨を入れただしはそのまま飲みほしてしまいたいほどまろやか。

 肉はやはり松阪牛を食べよう! ってことで数量限定の「カルビ重 漬物、汁付き(2,500円)」を。カルビと言っても良質な脂は胃もたれせず、こんなに量があるのにスルッと完食できる。

一頭買いしているからこそこれだけのカルビが提供できる。上品な脂質は口どけも良く、さすが松阪牛と思わせる。

 食事が終わったので散歩しながらデザートを食べに「コンフィチュールH(アッシュ)」へ。

49,000平米もの敷地には片岡温泉のある棟、それに続く宿泊棟、4つの離れ、笠庵と露庵温味のある温泉棟、イタリアンレストランやケーキショップのあるレストラン棟、石窯とベーカリーショップのあるベーカリー棟、そして2つの畑から成る。連なる山々と川のある風景が贅沢な時間を与えてくれる素晴らしい“楽園”である。

 オーナーのひとりでもある辻口さんはパティスリー「コンフィチュール アッシュ」、ベーカリー「マリアージュ ドゥ ファリーヌ」、そして「TSUJIGUCHI FARM」に携わる。日本のトップパティシエである辻口シェフの味を求めて朝から人々が並ぶ。

左:「ビターチョコ×木苺(520円)」は三層の生地と重厚なチョコレート、自家製の木苺のコンフィチュールを使い、甘さだけでなく酸味を感じるケーキと「コンフィチュール アッシュ」の統括責任者、籏雅典シェフは言う。
右:「TSUJIGUCHI FARM」で収穫したイチゴで作る「セゾンドガトー(445円)」。酸味と甘味のバランスが良い「紅ほっぺ」はこのケーキのためにあるようなものだ。低脂肪から高脂肪まで3種類の生クリームを使いふわっと軽い仕上がり。

 天気の良い午後は平日にも関わらずほぼ満席。それもそのはず。辻口シェフは味の確認や新作の試食などで毎月訪れ、絶品スイーツを提供しているのだ。

朝11時、限定商品や季節のコンフィチュールを使ったケーキなどがショーケースに勢ぞろいした様はうっとりする美しさ。

2017.03.24(金)
文=高橋綾子
撮影=榎本麻美