作詞家、ラジオパーソナリティ、そしてコラムニスト。八面六臂の活躍を続けるジェーン・スーさんが、最新エッセイ集『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』を上梓しました。この新刊は、雑誌CREAの好評連載に大幅な加筆を施し、さらにたっぷり書き下ろしも加えたもの。

 刊行を記念して、2016年6月29日(水)、CREAとantenna*による特別コラボレーションイベントが東京・南青山のantenna* <> WIRED CAFÉで開催されました。トークのゲストに招かれたのは、プライベートでも親交の深い、エッセイストのしまおまほさん。大いに盛り上がったその模様を、全5回にわたってレポートします!

talk04 「脅かしビジネス」と「夢見せビジネス」の間で

しまおまほさん(奥)とジェーン・スーさん(手前)の間のスクリーンに映っているのは『女の甲冑~』のプロモーション動画。著者のジェーンさん自身が甲冑をまとってもろもろ熱演している。

» talk01はこちら
» talk02はこちら
» talk03はこちら

ジェーン 「プルートクラット」って皆さんご存知ですか? 超富豪の政治権力者のことなんですけど。

しまお へえ。与沢(翼)みたいな?

ジェーン 与沢なんて目じゃない。与沢なんて小物よ。

しまお えー、ウソ~。誰だろう。

ジェーン 日本人にはいないのかもなぁ。

しまお じゃあ、ドバイにいるのか。

ジェーン ドバイかも。ウェブにプルートクラットの人が「TED」でしゃべってる動画とテキストがありまして、それを読むと、資本主義経済は解決策を見つけていくこと、たとえば作業をもっと楽にさせるというか、生活を便利にしていく人に報酬が与えられるシステムとして発達するもんだとあるんですね。人の役に立ってナンボだと。それ自体は素晴らしいことのはずじゃないですか。でも、現実には売り上げを上げるための「脅かしビジネス」がある。子どももそうだし、老後もそうだし。

しまお オーガニックも若干のその気はありますもんね。

ジェーン 「これがないと今年はヤバいですよ」って脅かされてガウチョ買ったけど、これってお母さんが買ってきたときに私が「ダサい!」って怒ってたキュロットだよな、とか。脅かされて踊らされて。あと、「ここに金鉱脈があるかもしれませんよ」という「夢見せビジネス」もありますよね。これはよくいわれる通り、アメリカのゴールドラッシュのときに一番儲かったのは作業用のジーンズ売ってたリーバイスと採掘用のつるはし屋で、砂金を探していた人たちではなかったという。「脅かしビジネス」と「夢見せビジネス」の間で私たちはウロウロしてるから、甲冑がたまるんですよ。今の甲冑のほうが昔の甲冑より複雑ですよね。

しまお そうなんですよ。まさに、次のお題は……(画用紙をめくって)、「世の中には甲冑が多すぎる」。

2016.07.24(日)
構成=臼井良子
撮影=鈴木七絵