おいしい海苔やおいしい魚のために

 人間から見ればきれいな川、きれいな海。それは誰にとってのきれいさで、それが他の生き物にとっても同じように生き心地の良いものとなっているのか。その答えは自然からの賜物である食品が明確に教えてくれ、海苔の不作や色付きの低下は、顕著に示しています。

 海に影響を与えてしまう工場排水や生活排水もありますから、その全てを緩めてしまうことが良いとは言えません。山、川、海、人間の生活と多くの環境や産業をまたいで作られているのが海苔の生態系でもある一方、色付きが悪くなっている海苔の視点だけであらゆる産業を調整することは本当に難しいと、容易に想像ができます。

 しかし、おいしい海苔を食べ続けていく未来のことも、同時に考える包括的な視点も求めたい。生き物にとって居心地の良いきれいな海とは何か、を考えてみたいと思います。

 もちろん、全てが海と山の循環のせいではありません。海水温の上昇によって、漁期自体が短くなっていること。本来は貝類を捕食するクロダイなどの魚種が、食べる貝が不足したことで、海苔を啄むようになった水中写真を、伊勢湾の桑名の漁業組合で見せていただきました。海の環境がそのままそのおいしさになる海苔だからこそ、地球温暖化の影響もやはり受けているのです。

 現在、一部の地域で、浄化設備のダウンサイジングをすることで、海苔の色付きが良くなったという実証実験の結果も報告され、実際に導入が検討されている自治体もあると聞きます。人間は、もう少しだけ不便であっても、もう少しだけ透き通るようなきれいさだけじゃなくても、海とともに生きる手段を選べるのではと思っています。森を守り、海を守り、そうやって、おいしい海苔を食べ続けられた方が、本当は幸せなんじゃないだろうか。それに優るものがあるのか。そう思ってしまいます。知ること、感じること、一歩を踏み出すこと、そんな食育が日本には必要になってくるし、それは子供だけでなく、大人にも必要だと言えます。それほどに知られていないことは多い。

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