土と水、自然な農法で育まれたお米、微生物の力を活かした調味料、その土地の自然環境に適応する在来種の野菜。今、そういったもともと日本人がつくり続けてきた食品は0.1%以下の流通量になってしまっています。
自然と文化が織りなし生まれた食品を「素の味」と呼び、もう一度、素の味が食卓にあるのがふつうの風景にしていけたらと始まった、会員制スーパーマーケット「Table to Farm」のディレクター・相馬夕輝さんに、日本の素の味を教えていただきました。
今回の話は、海苔の『素の味』。海苔のおいしさを追求すると、辿り着くのは海や山、川、人間の在り方だそう。海苔の本来のおいしさとは? 海苔の製造過程を紹介しながら紐解きます。
» 海苔を育てるのは海そのもの
» 海苔の『素の味』に選んだ、福岡柳川の「成清」
» 干満差6mもある有明海に浮かぶ一面の海苔養殖
» 昔ながらの本当においしい海苔をつくる「皿垣開漁港」
» 人、森、川、海の循環の弱さ。海苔産業が抱える課題
» おいしい海苔やおいしい魚のために
» 「魚付林」という言葉。日本人が愛する海苔の『素の味』
海苔を育てるのは海そのもの
有明海苔で知られる有明海は、福岡、長崎、佐賀、熊本に面して、日本の海苔のおよそ5割の生産量を誇る一大産地です。しかし、全国的な収量を県別で見ると、実は兵庫県がこの数年、最も生産量が多い県となりました。歴史的な不作が続いている有明海苔、しかしながら、これは有明海に限らず、全国的にみても海苔や、そもそも海藻全般の収穫量について、良好なニュースが届くことはほとんどないと言って良いのが現状かもしれません。
Table to Farmが訪問した、有明海苔の生産者も、伊勢湾の「伊勢あさくさ海苔」の生産者も、例外ではありませんでした。
海苔は、海の環境そのものの味と言っても過言ではありません。養殖に必要な設備を除けば、何せ必要なものは海水だけですから。海苔の生産の多くが養殖で栽培されています。穏やかな海の中に支柱をたて、種をつけたロープを規則正しく張り巡らせます。そして、海の干満の差を利用して育みます。潮が満ちると、海中の有機物をたっぷりと吸収して栄養を体内にしっかりと蓄え、潮が引くと、海面よりも上にロープに繁茂した海藻が浮き出てきて、天日による殺菌作用や旨みが凝縮されるなどの効果を経てじっくり海の中で育ちます。
生産時期は10月頃に種付けし、海水温が下がり、海中の雑菌の発生が抑制できる秋から冬にかけて栽培をします。中でも、有明海はその干満差が大きく、その差はおよそ6mほどもあると言います。遠浅で海苔養殖の支柱を立てやすく、かつ、その干満差によって、海苔の栽培に必要な環境が整いやすいのです。
