“作家さんのうつわを買って使ってみたい”人に届けたくなる本

 今月は、『うつわと料理のおいしい関係』(実業之日本社)という本も紹介させてほしい。うつわと料理に興味のある人、作家さんのうつわを買って家で使ってみたいと思う人に届けたくなる本だった。

 著者は東京・水道橋にあるうつわギャラリー「千鳥」の店主、柳田栄萬さん。飯碗、小鉢、オーバル、ガラスのうつわに漆器といった基本的なうつわの使い方や個性を分かりやすく解説すると共に、愛用のうつわを使って「こんな料理を盛ってもいいものですよ」と実際に示してくれる本なのだ。

 うつわだけを紹介する本ってどうしもてちょっとカタログ的、あるいは美術書っぽくなりがちなんだが、料理が入ることでグッと身近になる。本としての“肉づき”がよくなって、温度感が出るというか。同時に「こんな使い方もありなのか」、そして「おお、こんな色にトマトの赤は、青菜の緑はこう映えるんだな」というのが瞬間的に分かってくる。しかも、それぞれレシピ付き。柳田さん、なんともともと料理教室の講師でもあるのだ。

 おしゃれな料理もあれば、「じゃがいもとピーマンの和えもの」「甘じょっぱい玉子焼き」といった気負いのない惣菜も数多く、「こんにゃくのおろし合え」「パインとルッコラのサラダ」なんてのは意表を突かれて、ちょっと真似してみたくなる。インスタントラーメンやレトルトカレーを使った料理例は、“作家さんのうつわは特別のものではなく、普段の日常生活で気楽に使ってこそ生きるもの”という思いが伝わってくるようでもあった。

 毎日のように使う飯碗(つまり、ごはん茶碗)の柳田さんの好みは「野暮ったい」もので、「そのくらい気安い相手がちょうどよく感じる」というのに共感。オーバル皿は「食卓に並べたとき収まりが」よく、「リズム感が出て上手くまとまる」。染付のうつわの凄さは「手間のかけてない一品が『ちゃんとしたものに見える』ところ」等、各うつわの長所利点が的確に表現され、使っているうちぼんやり感じていたことがサクサク言語化されていく気持ちよさもある。

 そばつゆ入れに使う場合は「大きすぎると野暮ったく、不思議と味がぼやけて感じる」というのも納得だった。ごはん茶碗とはまた違う世界があるのだ。四寸皿は大きさ的に「実に中途半端な存在」だが「日々の暮らしの中では、この中途半端さがじわじわと効いてくる」と説き、漆器の頁では「値札を見たときに、もし高いと感じたなら、それはきっと真っ当な漆器です」と喝破するくだりなどは、うつわ屋の主人としての誇りと見識を感じる。

 文章表現の洒脱さにも唸り、ふわり全体に香るユーモアも心地いい。良き実用書であり、うつわエッセイであり。柳田さんにはこのCREAにも「うつわの選び方」をテーマにご登場いただいているので、そちらもぜひ読んでみてほしい。

白央篤司(はくおう あつし)

フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」がメインテーマ。主な著書に、日本各地に暮らす18人のごく日常の鍋とその人生を追った『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)、『はじめての胃もたれ 食とココロの更新記』(太田出版)がある。
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