「……あれ、何拝んでんのかな」

 体感では5分くらいは経っていたでしょうか。普通、神社へのお参りなど数十秒、長くても1分程度で終わるはずです。

「……長いね」

「何してんかなぁ」

「さすがに寒いんだが……」

 口々に小声で不満が漏れ始める中で1人、相手に聞こえてしまうほどのわざとらしい声色を上げたのはKさんでした。

「つーかさぁ、えっとぉー、『始終ご縁』でだから、45円入れるのがいいんだっけかぁ~? あ、なるほどねぇ~」

 ギョッとしましたが、目が合った彼がいたずらっぽく笑ったことで、すぐに自分たちの存在をあのカップルにそれとなく伝えるためだとわかりました。

 静かな境内に響き渡ったKさんの声。間違いなくその声はカップルにも届いていたはずです。

 けれど、それでもカップルは手を合わせたまま微動だにしないのです。

「……あれ、何拝んでんのかな」

「知るかよ。ダメだ、ちょっと寒すぎるから俺言ってくるよ」

「おいおいおい!」

「大丈夫だって、別に事は荒立てないから」

 そう言うと、Kさんは手を合わせるカップルの元に足早に歩いていってしまいました。

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