ゴールを決めたことで転がりだした「OKプロジェクト」

 ゴールに向けて、自分たちにできることからはじめよう。

 そうしてスタートしたプロジェクトは下北沢の地下を飛び出し、同年6月には三鷹SCOOLで《映画『観測者たち』のための演劇『観測者たち』》を、10月には祖師谷ムリウイで《映画『観測者たち』のための音楽劇「観測者たち」》として結実する。そして、その実は予想もしなかった花を咲かせた。10月の公演に来場したポレポレ東中野の小原 治氏からOKプロジェクトの応援として『眠る虫』の上演をしたいと連絡が来るのだ。

「映画をつくることに苦労しているなら、映画を作っている過程そのものを創作化してしまえば、資金集めにも繋がるんじゃないかというのがプロジェクトのスタートだったんです。金子さんのやりたいことを形にできるように私がプロデュースしていく。少しずつでも、一つひとつ紡いでいくことで映画を形作っていく。編み物のような映画作りの過程がこうして結果になった時、OKプロジェクトというコレクティブを立ち上げた意義を感じました」(二井さん)

 ありがたい申し出はもちろん快諾、しかしそれで留まらないのがOKプロジェクト流。「せっかくなら撮っちゃおうよ」と『観測者たち』のスピンオフ新作『外と』の制作を決めた。タイトル『外と』はOKプロジェクトの映画作りの過程をそのまま表している。2回の演劇開催で貯まったお金を予算にする。二週間という期間で作品をつくる。そうした外側の条件から映画を考えて作ろうという想い、そして制限があっても映画は作れるのだという決意から名付けられた。

「映画をつくることって大変、と思ったこともあったけど、今振り返ってみると、自分で難しくしていた気がします。肩肘張らずに考えてみると、そもそも映画ってどこから生まれるんだろうかって。OKプロジェクトは私と二井さんが出会ったときから始まっている。そういう意味でもスクリーンに映っている映像だけが映画じゃない。上映が終わって、劇場を後にして外で観た景色も地続き。『外と』は映画の“おこり”みたいなものだし“何でもない”いい映画。もしかしたら、もう二度とこれほどリラックスしている視点では撮れないかもしれない」(金子さん)

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