この記事の連載

 幅広い知見を生かしてアウトドアカルチャーを提案するレーベル「焚火遊道」の猪野正哉さん、田中行太さんが、自然もグルメも街歩きも楽しめるウェルネスな日帰りトリップをコーディネート。

 第四弾は、連載で初となる一泊二日の旅を敢行! 山梨県の三ツ峠山(みつとうげ山)で朝から手軽なショートトレッキングを楽しんだあとは、その地ならではの食彩を巡る街歩きタイムです。

 今回の旅の主役は映画監督の金子由梨奈さんと俳優の石川古都さん。心地いい疲労感を抱えながら、まずはノスタルジックな商店街で知られる富士吉田の月江寺(げっこうじ)界隈へ。大通りから少し外れた細い路地裏に、ひっそり佇む素敵なお店を見つけました。

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レトロな路地に佇む大人の隠れ家イタリアンへ

 江戸時代より織物産業や富士山信仰により栄えた山梨県・富士吉田。とくに月江寺駅周辺の新世界乾杯通りや子の神通りなどでは、昭和初期に賑わいをみせたスナックやカフェ、宿場の廃墟が残されており、なんともノスタルジックな雰囲気に包まれています。

 昔情緒にあふれる町並みを散策していると、壁が薄あさぎ色に彩られた小さな店を発見! その素敵な店構えと「TRANSPARENT FULLMOON(トランスペアレントフルムーン)」という店名に惹かれた金子さんと石川さんは、この店でランチをしようと決めました。

 電球のやさしい灯が印象的なほの暗い店内は、大人の隠れ家のような落ち着いた空間が広がります。トレッキング後でお腹を空かせた二人は、早速ランチコースをオーダー。

コンセプトはスローフード。山梨ならではの幸を堪能しよう

 まず提供されたのは前菜のサラダと豆のスープ。野菜は隣の都留市でオーガニック野菜を育てている農家さんから仕入れるなど、山梨県産のものを取り入れるようにしているとか。

 「豆の素朴でやさしい味のなかに、しっかり出汁の旨みも感じられて美味しいです」と金子さんはスープを絶賛。ちなみにこの日は豆スープでしたが、一年を通してはカーボロネロという黒キャベツを使ったスープを提供していることが多いそうです。

 そして二人がメインディッシュに選んだのは、ほほ肉の赤ワイン煮込み。口の中に入れると肉の繊維がほどけるような柔らかい食感に加え、赤ワインが引き出す上品な肉の旨みとコク、ポテトピューレの爽やかな甘みが交互に押し寄せてきます。

 イタリア発祥である「スローフード」、つまり地のものを旬の時季に体に取り入れることをコンセプトにスタートしたトランスペアレントフルムーン。山梨県で採れた新鮮な野菜をふんだんに使って丁寧に振る舞われるイタリア料理は、どれも奥ゆかしく、滋味深い。さらに料理とのペアリングを楽しめるナチュラルワインも豊富に取り揃えているので、夜にゆっくり訪れるのもオススメです。

 気さくなオーナーとの楽しい会話もまた絶好のスパイスとなり、楽しい食事タイムを過ごすことができる知る人ぞ知る名店。月光寺を訪れた際は、ぜひトランスペアレントフルムーンで心温まるスローフードを楽しんでみてほしい。

トランスペアレントフルムーン

所在地 山梨県富士吉田市下吉田3丁目7−25
Instagram @transparent_full_moon

2024.07.07(日)
文=平野美紀子
撮影=深野未季
スタイリスト=永田哲也