2024年には「いいにごり酢の日」(11月25日)が制定され、にわかに注目が高まる“にごり酢”。にごり酢とは、昔ながらの製法で酢酸菌(さくさんきん)をあえて残したお酢のことで、近年、全国の蔵元の間で復刻する動きが広がっています。

 今回は福岡県の老舗「庄分酢(しょうぶんす)」を訪ね、にごり酢造りの現場を見学してきました。今回は、お酢のおいしさ、奥深さを堪能できるレストランとショップのご紹介です。

» 前篇はこちら


お酢の奥深さに驚く酢レストランがオープン

 江戸時代初期に造り酒屋として創業し、1711(正徳元)年に4代目が酢造りを始めた「庄分酢」。現在は15代目の高橋清太朗(清太郎)さんが、父で14代目の一精(かずきよ)さんと酢屋を営み、300年にわたり受け継がれてきた一子相伝の製法による酢造りを行っています。

 2025年9月には、母屋2階のレストランが「酢Ristorante SHOBUN」としてリニューアル。伝統発酵酢と季節の食材をふんだんに使った、心も体も健康になるガストロノミー体験が楽しめます。

 メニューはコースのみで、前菜からデザートにいたるまで、すべての料理にお酢を使っているのが特徴。その気になる料理と、合わせたお酢を紹介していきましょう。

 この日の前菜盛り合わせから、まずウナギの酢の物には「手しごと酢」を使い、キュウリを酢漬けに。魚の南蛮漬けには「南蛮漬けの素」、クラゲの酢の物には「十四代一精の生ぽん酢」を。なかでも印象的だったのは、国産牛のローストビーフ。添えられたワサビに、まさかの「美味酢」を合わせていて、マイルドな辛さがクセになる味わいでした。

 生ハムといちぢくのマリネには、「純りんご酢」を使用。りんご酢と牛乳を合わせたとろみがあるソースは、色々な料理にアレンジできそうです。

 魚が主役のプレートには、「庄分純米酢」を合わせたバジルソースと人参のピューレ、そしてブドウ果汁を煮詰めたバルサミコ風の「ビネガーソース」を添えてアクセントに。

 肉料理には、赤パプリカと黄パプリカのソースに、「庄分米酢」とタマネギの和風ソース、「かすみくろ酢」で酢漬けした赤キャベツを添えて、鮮やかな一皿に仕上げました。

 最後の料理は、「すし酢」を使った五目ちらし寿司。和洋折衷のコースをさっぱりと締めくくることができます。

 デザートはヨーグルトのパンナコッタ。飲む酢の「酢飲 いちご」をベースにしたソースに、ラズベリーを合わせた甘酸っぱさがクセになる一品です(ランチコースは2,850円~。今回紹介したのは5,000円のCコース)。

 フレンチ出身の木下陽介シェフは、独学で和食を学び、庄分酢の個性豊かなお酢を使った料理を日々探求中。

 「自宅で再現しやすい料理をコンセプトに、お酢を使ったレシピを考えています。レシピもすべて公開しているので、毎日の食卓にお酢を取り入れてもらえたら。飲むだけ、かけるだけでもおいしい食べ方があるので気軽に聞いてください」と木下シェフ。

 ちなみに、高橋家ではカレーに「かすみくろ酢」などのくろ酢を合わせるのが“母の味”だそう。ホームページでもたくさんの役立つレシピを紹介しているので、チェックしてみてくださいね。

次のページ 飲んでかけて食べられる! 約200種類のお酢&加工品

CREA 2026年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。