「のこの声が時生くんと聞いて撫でづらくなった」
劇中では、犬たちの“心の声”が物語をいっそう盛り上げます。その声を担当しているのが、柄本時生さん(福助役)、津田健次郎さん(ボム役)、MEGUMIさん(ひとみ役)という豪華な顔ぶれ。
実は、声のキャストが決まったのは撮影開始後で、大東さんは「のこの声が時生くんに決まったと聞いてから、なんとなく撫でづらくなった(笑)」と告白。
さらに、「カメラマン・三田(こがけん)の愛犬ボムの声が、津田健次郎さんだったのは渋すぎてシビれました」と語り、絶妙なキャスティングに現場もざわついたそう。
声の演出について、内藤プロデューサーは「犬が人間の言葉を完全に理解しているようにはしたくなかったので、普通の話し方とは少し違うニュアンスにしています」と説明。
特に、柄本さんのひょうひょうとした話し方はおかしみを誘い、切ない場面ではより胸に迫ります。犬たちの細やかな動きや仕草に合わせてアテレコされているため、リアルな犬の気持ちに寄り添うようなさじ加減で、ドラマの世界観にほどよいユーモアと奥行きを与えています。
時にはバカになることの大切さ
本作を語る上で欠かせないのが、今から20年前の「平成真っただ中」の物語であること。舞台となったのは、国内初の日本犬専門誌『Shi-Ba』の編集部で、まだSNSがない時代に、熱量だけを武器に雑誌づくりに挑んでいた編集者たちの奮闘を描いたノンフィクションが原作になっています。
そのため、ドラマでも雑誌編集の現場が丁寧に描かれていて、大東さんは「ドラマの中の雑誌づくりなんですけど、結構本気になっちゃって。劇中で終わらせるのはもったいないほど、しっかり誌面を作っていました」と話し、犬のかわいさを押し出すだけではなく、“人と犬の距離をどう描くか”を何度も話し合ったそう。その熱量や泥臭さは、まさに“あの時代”の空気感そのものです。
「大東さん演じる相楽は、自分本位で口も悪くて、今だったらパワハラとも言われかねないタイプ。でも、本気で何かに向き合って、時にはバカになるほど熱くなれる。そういう人間味があるんですよ。令和の時代になって忘れられてしまった“バカになることの大切さ”も、ドラマを通して思い出してもらえたらと思います」(内藤さん)
