健流が感じていた孤独は……
――ぬくもりのある現場だったのですね。
ひと言で言うと、福地さんがあたたかい人なんです。まわりを包み込むような優しさがあって、本作で演じた渡辺香里とは真逆の印象です。
――役作りや福地さんとの掛け合いで、どんな難しさがありましたか。
僕にしても福地さんにしても、繊細なセクシュアリティを持つ当事者ではないので、「本当の彼らの気持ち」は到底理解できないと思います。だから、竹馬監督とも、福地さんとも「自分が健流だったら、香里だったらどうする?」ということを常に話していた気がします。
頭の中で考える「健流」像と、自分の感情から湧き出てくる健流の気持ちの一致する部分、相反する部分を探しながら役を作り込んでいくのは難しかったです。
ただ、先ほども申し上げましたが、竹馬監督が僕の意見を丁寧に聞いて拾い上げてくださったので、僕も遠慮なく「こう思うんですけど、どうでしょうか」と提案できました。すごくいい現場だったと感謝しています。
――健流の孤独感が寛一郎さんご自身のメンタルに影響されたりはしませんでしたか。
それはないです。これは、健流というキャラクターの解釈にもよると思いますが、彼が抱える孤独や寂しさは、健流の人生の通奏低音となっていると僕は理解しています。
物語が進むに連れ、健流は自分の孤独感や埋められない寂寥感に耐えられなくなっていく、というとらえかたもできると思いますが、僕はある意味彼は解放に近づいていったのではないかと考えました。
もちろん、彼が物語の中でとった行為を肯定するつもりはありませんが、僕の中では健流はどんどん楽になっていったのではないかと思えたので、演じていてもそんなにつらいと感じたことはありませんでした。
