上大岡 仕事の都合上、私のほうが実家に帰ることが多かったので、私がメインで動くよ、という話はしていました。実は私と姉は、それほど“仲よし姉妹”ではなかったんです。仲が悪いという意味ではなく、ふたりともドライというか、用事がなければとくに連絡も取り合わない関係がこれまで続いていました。

 でも、老人ホーム入居に関しては頻繁な情報交換が必要です。その当時、姉はLINEを使っていなかったので、「アプリをダウンロードしてくれる?」というところから始まって。親に会ったときは事細かに状況を報告するなど、こまめに連絡を取り合うようになりました。

姉妹の関係は「いい意味でビジネスライク」

――意見や主張が食い違ったときは、どのように軌道修正されたのですか?

上大岡 ありがたいことに、姉は私の決めたことには一切文句は言うまいというスタンスを通してくれました。「こうすることにしたけど、どう思う?」と聞くと、「それでお願いします」と。一度も反対したことがないんです。ただ、相談には乗ってくれるし、お金が必要なときはきちんと動かしてくれるので、困ることは何もありませんでした。

――親の介護を通して、親族同士が仲たがいするケースが少なくないと聞きます。上大岡さん姉妹の場合は、なぜうまくいったのでしょう。

上大岡 いい意味でビジネスライクというか、プロジェクトを一緒に推進しているような感覚で、私自身も「これは親孝行プレイだ」と思いながら、事務的に作業をこなしていたからでしょうか。実際、いろいろな人と連絡を取りながら、両親を介護するチームを組んで、山口から遠隔操作するのは結構面白かったんですよ。

――「親孝行プレイ」という考え方は、目からうろこです。

上大岡 自分の親なので感情が入ってくるのは当然ですが、それは横に置いておき、すべてがプロジェクトという気持ちで向き合っていました。

 とはいえ、認知機能が落ちて同じことを何度も言わせる父に「何回言わせるんだ、このじじい!」と乱暴な言葉が口から出そうになって、自分の部屋に駆け込む……みたいなことは何度もありましたが(笑)。

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