娘とのひとときが何よりも幸せ
――堤さんが演じるべん造は、「幸せってなんですか?」という問いに、「突然いいことが起こるとか、突然お金持ちになるとか」と答えます。では、堤さんご自身なら、この問いにどう答えますか?
歳を重ねるにつれて、日常のなんてことない時間に幸せを感じるようになってきました。もちろん旅行とか、非日常的なことも楽しいですが、こちらが喜んでいるひとときも、子どもたちは面白くないなと感じていることも多々あるので(笑)。
長い人生になりましたが、この歳になってもまだ仕事をいただけているなんて、とても幸せだなぁと感じることもあるし、まだまだもがいている最中で苦しいな思うこともあるし、幸せの定義というのは日々変わりますね。
――そのときの気分や状況によって、幸せの感じ方って変わりますよね。では最近、「ああ、幸せだな」と感じた瞬間はどんなときでしたか?
昔の耳かきって木製でしたよね。子どもの頃はそれを使って自分で耳かきをしていたから、よく耳が血だらけになっていたんですよ(笑)。いつからかその古傷から、毛がひょろっと生えてくるようになってしまって。それを娘がチェックして、「じっとしててね」って抜いてくれるんです。ありがたいですよね。でも、もう少し経ったら「耳に毛が生えているなんて、きもい」とか言われちゃうんでしょうね。今だけの幸せな時間です。
堤真一(つつみ・しんいち)
1964年7月7日生まれ、兵庫県出身。『弾丸ランナー』(96/SABU監督)で映画初主演を果たし、2000年放送のドラマ『やまとなでしこ』で幅広い世代の支持を獲得する。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞ほか国内の映画賞を多数受賞。本年は、NHK 連続テレビ小説『ばけばけ』、舞台『ライフ・イン・ザ・シアター』に出演。
『旅と日々』
監督・脚本:三宅唱
原作:つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
出演:シム・ウンギョン 堤真一 河合優実 髙田万作
11月7日(金)TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド
©2025『旅と日々』製作委員会
https://www.bitters.co.jp/tabitohibi/
【STORY】
大学の授業で、李が脚本を書いた映画を上映している。上映後、学生から映画の感想を問われた李は、自分には才能がないと思ったと答える。冬になり、李は雪に覆われた山奥を訪れ、おんぼろ宿にたどり着く。宿の主人・べん造はやる気がなく、暖房もまともな食事もない。ある夜、べん造は李を夜の雪の原へと連れ出す……。
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- staff
- 文=高田真莉絵
撮影=榎本麻美
ヘア&メイク=奥山信次(barrel)
スタイリスト=中川原寛(CaNN) - INTERVIEWEE
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堤 真一
