受け継がれる「サヴォアフェール(匠の技)」と革新を追求するメゾンの精神

 第4章は新館に移り、「サヴォアフェールが紡ぐ庭」と題して「庭園」をテーマに展開。ヴァン クリーフ&アーペルが創業以来大切にしてきた、動植物から着想を得た多様なジュエリーが紹介されている。

 糸のように細いイエローゴールドで花びらの輪郭を表現した《シルエット クリップ》をはじめ、鳥やテントウムシ、カメ、カタツムリなど、精巧で遊び心あふれるジュエリーに、思わず胸が躍る。

 メゾンが追求してきた「形を変えるジュエリー」を進化させた「ジップ ネックレス」は1938年に特許を取得している。

 房飾りのついたタッセルをスライドさせてジップ(ファスナー)を閉じるだけで、ネックレスからブレスレットへと姿を変える。飛行士や軍人のジャケットに用いるために登場したジッパーをハイジュエリーへと昇華させた、大胆な発想と洗練されたデザインに驚かされる。

 宝石の側面に溝を掘り、台座のレールに滑らせてはめ込むことで、爪を表に見せずに仕上げる技法「ミステリーセット」は、ヴァン クリーフ&アーペルが誇るサヴォアフェールのひとつで、1933年に特許を取得している。

 ごく小さくカットされた無数のルビーをゴールドのレールに留め、菊の花の繊細さや複雑さを表現した《クリサンセマム クリップ》は、1937年にパリで開催された「現代生活における芸術と技術の国際博覧会」に出品され、高い評価を得た。

 制作工程の動画も展示されており、熟練職人によって宝石が一つひとつ丁寧に留められていく様子を見ることができる。

オリジナルグッズのほか、展示にちなんだ限定アイテムも

 展示を存分に堪能した後は、ミュージアムショップ「LUMIÈRE(リュミエール)」をのぞいてみよう。

 オリジナルグッズとしては、《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》や《ローズブローチ》をはじめ、展示作品のきらめきを忠実に写し取ったポストカードやノート、クリアファイルなどを販売。

 このほか、パリのモチーフが楽しめるアートトランプや、ジュエリーをモチーフにしたクッキー缶、アール・デコ関連の書籍なども並ぶ。

 併設のカフェやレストランでは、アール・デコ博覧会の100周年を記念して作られた特別なメニューも展開されており、鑑賞の前後にランチやティータイムを楽しむのもおすすめだ。

永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ

会期 ~2026年1月18日
休館日 月曜日(11月3日、24日、1月12日は開館)、11月4日、25日、12月28日~1月4日、1月13日
会場 東京都庭園美術館
住所 東京都港区白金台5-21-9
開館時間 10:00~18:00(11月21日、22日、28日、29日、12月5日、6日は~20:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金 一般 1,400円 / 大学生 1,120円 / 高校生・65歳以上 700円
※日時指定予約制
主催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館、日本経済新聞社
特別協力 ヴァン クリーフ&アーペル
問い合わせ  050-5541-8600(ハローダイヤル)