夜な夜なマンガに夢中になる大人が急増する中、2022年に誕生した「CREA夜ふかしマンガ大賞」。眠りにつく前の自分だけのひとときに、ページをめくりながら癒され、息を呑み、泣いて笑って――。第4回となる今年も、日常のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる名作が揃いました!

 今回は、マンガ家さんと二人三脚で数々の名作・ヒット作を生み出してきたマンガ編集者の方々に選考委員を務めていただきました。「夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品」「人生で思わず夜ふかしして読んだ作品」「マンガを読むときのマイルール」など、マンガ好き必読のアンケートです。


山本侑里さんが「夜ふかしマンガ大賞に推薦するマンガ」

◆『半分姉弟』藤見よいこ/リイド社

 フランス人の父と日本人の母を持つ米山和美マンダンダ。弟から「改名した」と突然の告白を受けて――。さまざまなルーツを持つ登場人物たちの葛藤を描く群像劇。

「今、2025年に推薦するとしたら、どうしてもこの作品は外せないと思いました。どんなに気を付けていても、ふとした瞬間に出てしまった言葉。それが、本人ではどうすることもできないこと、だったとしたら。想像力を働かせているつもりでも、それは想像でしかないもの。当事者でないとわからないもの。自分は(和美の友人の)シバタだと思いました。くらいました……。いかに自分が傲慢な人間なのかを思い知らされましたね。

 でも決して暗い気持ちになるわけではなく、居酒屋に行きたくなりますね! わかりあえないかもしれないけど、わかりあいたいを諦めないぞ、という気持ちで、作中の言葉を敢えてそのまま使うなら“ハーフ”と呼ばれるいろいろな人々の物語を追いたいです」

◆『そしてヒロインはいなくなった』ばったん/双葉社

「完結後、一気読みした作品です。第一印象は、トラちゃんカッコいい。最後は、トラちゃんと友達になりたい、です。作中の“ヒロイン”みんな愛おしい。なんでしょう、友人と話をしているような気持ちになるんですよね。また会いたいな、と思わせてくれるマンガでした」

◆『パーフェクト・グリッター』をのひなお/小学館

「『明日、私は誰かのカノジョ』を読んでいて、をの先生は優しい視点を持っている方だなと思ったんです。取材をしっかりされているからこそのリアリティで現代の“闇”を描きつつも、最後はパンドラの箱のようにちょっとした希望を用意してくれている。露悪的でなく、そこが素敵だなと思っています。

 新作はネオ・シスターフッドものだと思っているのですが、どうでしょう。ヤナちゃんのことを考えると胸が苦しくなります。この先どうなるのか読めませんが、楽しみにしている作品です」

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