確かな演技力で多くの人を魅了する松山ケンイチさんと長澤まさみさん。このたび映画『ロストケア』で初共演を果たした。

 誰もが信頼する献身的に働いていた介護士が、40人以上のお年寄りを殺していた。彼はそれを殺害ではなく「救ったのだ」と語る。果たして、それは本当に救いなのか?

 葉真中顕の小説を、『そして、バトンは渡された』や『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の前田哲監督が映画化。家族の介護の限界や、貧困問題、人の命を裁く権利など、さまざまな社会課題を問うエンターテインメントになっている。

 連続殺人犯の介護士・斯波宗典を演じた松山さんと、彼を裁く検事・大友秀美を演じた長澤さんに語ってもらった。


——重いテーマではありますが、エンタメとしても楽しめて、介護や社会のありかたについて考えさせられる映画でした。どういう思いで本作に参加しようと思われたのですか?

松山 僕はもう10年近く前に監督から、この企画について聞いていました。ちょうど人生の終わり方について考えていたところだったので、まず原作を読みました。小説には、人間らしい死のあり方や社会の問題が描かれていました。ほとんどの人が考えることのなかっただろう問題ですが、介護殺人のニュースは増えてきています。観てくださる方に何かきっかけを与える面白い作品になるんじゃないかと、僕もたずさわれたらと思いました。

長澤 私は日常的に母と、老後についてどうしたいかなどよく話しているんです。必ずしも家族のことは家族がみなくてはいけないわけではなかったり、さまざまな形が生まれているんじゃないかなと思っていました。脚本を読んでみたら、多様な家族の姿が描かれていて、共感できる部分、問題提起を感じる部分があり、引き込まれました。

 また、斯波さんと大友さんのやりとりにも興味が湧いて、演じてみたいなと思いましたね。

次のページ 催眠術にかかったようにだんだん取り込まれていくイメージ