世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第110回は、かつて麻薬密造地帯として悪名を轟かせたタイの奥地で、芹澤和美さんが象たちと触れ合います!

「エレファントキャンプ体験」でじっくり象と触れ合う

ゴールデントライアングルで象使い体験。タイでは、アユタヤやプーケットなどの観光地でも象と触れ合うことができるが、象使い体験ができる場所はとても貴重だ。

 メコン川を挟んでミャンマー、ラオスと接するタイの最北端、ゴールデントライアングル。かつては麻薬密造地帯として悪名高い時代もあったが、再開発によりそのイメージは一変、今は自然豊かな観光地となっている。訪ねたのは、丘の上のリゾート、「アナンタラ・ゴールデン・トライアングル・エレファントキャンプ&リゾート」。目的は、「マフー」と呼ばれる象使いの訓練を体験できるプログラム、「エレファントキャンプ体験」だ。

象と象使いは広大なリゾートの敷地内に暮らしている。朝もやの中を、次々と象が現れる様子は感動的。

 象と象使いの一日は早い。日が昇ってすぐ、水浴びが始まる。南国タイといえども、ここは最北端。乾季の気温は10度を下回ることもあり、川辺はヒンヤリと肌寒い。だが、そんな人間を横目に、象たちはとても元気。「朝のひとっ風呂!」とばかりに川にじゃぶじゃぶと入ってゆく。静かな朝の森に響くのは、水の音と、象使いの掛け声と、喜んでいるかのような象の鳴き声だ。

川で象たちがいっせいに水浴び。水浴びを毎日するのは、象の体に虫がつくのを防ぐため。

 川に入ると、象使いの一声で象がしゃがみこむ。象使いが象の背中をゴシゴシと洗うと、目を細めて気持ちよさそうな顔をしたり、鼻のシャワーで背の上の象使いに水を浴びせたり。川から上がったら、ゴロンと横たわって皮膚状態をチェック。その様子はまるでじゃれているようにも見えるが、これは象と象使いの信頼の証だ。野生の象は、けっして自ら横たわることはないという。

2015.11.03(火)
文・撮影=芹澤和美