象と象使いを救い、旅人が学べるプログラム

象に向ける象使いの眼差し、そしてそれに答える象の目はとても優しい。

 こうしたアクティビティは、財団「ゴールデン・トライアングル・エイジアン・エレファント・ファウンデーション」と「アナンタラ・ゴールデン・トライアングル・エレファントキャンプ&リゾート」との共同で行われている。財団の目的は、象と象使いのサポートだ。ゲストが体験費として支払った料金は、財団の活動に使われる。つまり、象の賢さと威厳を知る貴重な体験は、同時に象たちの一助にもなるというわけだ。

集落でのんびりくつろぐ子象。集落の少年たちとともに、すくすくと育っている。
象の寿命は人間に寄り添えるほど長い。出稼ぎも、里帰りも、彼らはいつも一緒。

 タイ北部の山岳民族は、古くから象と暮らしをともにしてきた。「象使いの村」と呼ばれる集落では、基本的に、象1頭につき、一人の象使いがいる。アジア象の寿命は70年以上。子どもが13歳ぐらいになると子象1頭があてがわれ、ともに成長していく。象使いと象はいつも一緒だ。かつて彼らはペアを組み、主に森林で木材運搬の仕事をしていた。村から各地へ出稼ぎに出た彼らは、年に一度の村祭りには、連れだって帰省するのだそう。

 だが、時代が変わり、これまでプライドを持って仕事をしていた象使いたちの職場も失われてしまった。1989年に環境保護のため森林伐採が禁止となって以降は、観光客を乗せて歩く象タクシーやパフォーマンスなど、観光業に“転職”。村を出て観光地で出稼ぎをしているのが一般的だ。

2015.11.03(火)
文・撮影=芹澤和美