耳の後ろを蹴りながら象をコントロール
朝の日課が終わった後は、いよいよ象の乗り方を教わる。「マップロン!(お座り)」と象使いに倣って象に大声で語りかけると、象は大きな体を折り曲げ、こちらが乗りやすいように、ちょこんと座ってくれる。象の前脚に自分の足を乗せて、耳をつかみながら飛び乗り、またがる。イメージでは「象の背中に乗る」というよりも、耳の後ろに足をひっかけて、首に乗る感じだ。
象の背に乗れてほっとしたのもつかの間。のっしりと象が立ち上がった高さは想像以上で、落ちはしないかと冷や汗をかく。ロープや鞍はないから、象の頭を必死に押さえながら、自分でバランスをとるしかない。「もっと前に乗って!」という象使いのアドバイスで、ごそごそと首上に移動すると、なんとなく落ち着きどころが分かる。象使いが傍らにいてくれるから安心だが、こんな不慣れな観光客を乗せる象には、申し訳なく思う。
乗ったら、次は動き方の学習。かかとで象の耳の後ろを蹴りながら、「パーイ(すすめ)」。めざす方向の逆側の耳後ろを蹴りながら「ベーン(曲がれ)」、「ハーウ(止まれ)」。これらの言葉は、タイ語ではなく、象使いが使用している言葉。タイ北部に暮らす民族の言葉をベースにしているのだそう。
2015.11.03(火)
文・撮影=芹澤和美