太陽が昇らない、神秘的な「カーモス」を体験

茜色に染まるイナリ湖を見下ろす、トゥーリスパエーにて。夕焼けを眺めに、町の若者たちも集まってきた。

 カーモスの季節は、太陽は姿を現さないけれど、真っ暗というわけではない。朝10時頃、日の出前のような明るさが訪れる。微かな光をとらえた雪原はほのかに輝き、青い光の世界になる。やがて14時頃から1時間ほど西の空が赤く染まる夕映えの状態に。雪の平原の真ん中で空を見上げると、茜色と青の壮大な色彩スペクタクルに取り込まれたような気分が味わえる。

ポロティラ・トナカイ牧場のマットゥスさんとご家族。この日はトナカイを一カ所に集めて所有者を確認する冬の行事、ポロ・エロトスのために家族総出でお手伝い。

 1月中旬、コタ(テント)の中で焚き火を囲み暖をとりながら談笑していると、サーミの若者が「昨日、丘の上から今年最初の太陽を見たよ」と嬉しそうに教えてくれた。これから、日増しに太陽が姿を見せる時間が延び、春が近づいてくる。自然の中の兆しを見逃さず、日々の喜びに変える。自然と寄り添うサーミの暮らしを垣間見た気分だ。

アクティビティの後は焚き火でブレイク。やかんコーヒーやマッカラ(ソーセージ)など焚き火グルメも大きな楽しみ。

2015.04.27(月)
文・撮影=古関千恵子