世界の建築業界がスカンジナビア建築に注目している昨今だが、またひとつ北欧らしい木造建築がアート的な観点と融合したプロジェクトが発表され話題を呼んでいる。

自然にとけ込む瞬間を体験できる

 見渡すかぎり広がる深く澄んだ湖。雄大な自然に囲まれた湖のほとりに建てられたこの展望台は、ノルウェーのオスロとボードーにオフィスを構えるリンタラ・エガートソン建築事務所によるプロジェクト。フィンランド人建築家サミ・リンタラとアイスランド人建築家ダガー・エガートソンによって2007年に設立されたこの事務所は、家具デザイン、パブリックアート、建築設計などプロジェクトベースの作品をこれまでに数々発表しており、今回の作品も彼ら特有の北欧らしさが滲み出た、大自然との融合が感じられるものとなった。

 首都オスロより車で3時間ほど北にある西テレマーク地方のセルヨード湖畔。隣接するセルヨード市の町おこしプロジェクトの一環として建てられたこの展望台は、実はこの湖に昔から住み着いていると言われる巨大な海蛇を観察するためのものだとか。この大蛇神話はこの地で数世紀にわたり語り継がれており、地元民はその大蛇をセルマと名付けその物語と共存してきた。

次のページ 湖畔には小さなインスタレーションが点在

text:Riko Iriyama