Vol.12_Yves Saint Laurent Beauté
イヴ・サンローランのファンデは見た目のキレイが違う
「ファンデーション」ほどブランドの個性が出るアイテムはないと思う。“透明感”ひとつとっても捉え方や表現の仕方は違うし、機能性のアプローチもさまざま。日本の女性はファンデが大好きだからニーズも高いし、評価も厳しい。そんな激戦ファンデ市場で存在感を見せるのがイヴ・サンローラン・ボーテだ。ファッション界で“色の魔術師”と称されたムッシュ・サンローラン。色や質感に対する彼の深いこだわりはカラーメイクアップのみならず、「肌」の見せ方にも息づいている。
「ムッシュ・サンローランは『女性を映し出す魔法のカラー、ゴールドが好きだ』と語っていて、クリエイションにもさまざまなゴールドを使っていました。女性を輝かせる色だと考えていたのだと思います。ベースメイクでは“光”。外からの光をいかに味方につけて肌を美しく見せるか。単に隠すのではなく、光を操ることで一人ひとりの肌を生かすこと。イヴ・サンローランのベースメイクの基本的な考え方です」と話すのはイヴ・サンローラン・ボーテ AD/PRマネージャーの石井利代子さん。
筆ペンタイプのラディアント タッチは象徴的な1本だろう。独特のゆるーい水感テクスチャーで狙ったところにスッとなじみ、みるみる肌色が明るく澄みわたる仕上がりはまるでスポットライト効果。発売から20年以上経っても売れ続けている“くすみ払い”の名品だ。簡単に使えて見た目の肌がキレイ。イヴ・サンローランのファンデの強みは何と言ってもここ!
「ラディアント タッチのヒットでイヴ・サンローランのファンデーションが認知されたというのはありますね。90年代半ばにアジア限定のパウダーファンデーションが発売されたんですが、これが爆発的ヒットに。『写真がキレイに撮れる』と評判になり、当時は“お見合いファンデ”と呼ばれていたそうです。実はコンパクトにもこだわりがあって蓋が180度まっすぐ開くようになっているんです。90度くらいだと覗き込む姿が美しくないので」(石井さん)
鏡が大きくて見やすいなとは思っていたけれど、メイクするときの仕草まで考えていたとは。でも、こういう美的センスや思いやりに女性たちはわくわくするのよね。ベースメイク界に新風を巻き起こした、容器を回すことで粉を削りだすフェイスパウダーやブラシ一体型のリキッドファンデもそう。“簡単・キレイ・気持ちいい”を極めた意味あるカタチ。もちろん、これが叶うのは技術があってのことだけど。
2015.03.02(月)
文=吉田昌佐美
撮影=塚田直寛