【BLはブロマンスの隣人である。】

 ブロマンス(bromance)とはブラザーとロマンスを組んだアメリカ発の造語。男性同士の極めて近しい関係のことですが、性愛の対象ではなく、あくまでホモソーシャルな親密さの一種を指し、BL用語でいう「匂い系」と親和性が高い。「匂い系」は男同士の恋愛を描いているわけではないが、読者が行間を妄想読みするとそうとも取れる作品のことで、有名どころでは夏目漱石の『こゝろ』、また犯罪捜査を描いた“バディもの”もこれに相当。シャーロック・ホームズとワトソンを嫌いな女子はいませんから!……つまりそういうことです。ガチのBLを読むのはちょっと、という初心者にはブロマンス要素の濃い“バディもの”がおすすめ。

ちぐはぐな霊感男子2人の関係性をブロマンスで読む

 人気マンガ家・ヤマシタトモコさんは、BLマンガでデビューし、一般誌に進出した作家ですが、並行してBLも描き続けています。そんな彼女の画期的な試みが『さんかく窓の外側は夜』。「マガジンBE×BOY」という老舗BL雑誌のド真ん中で、単行本1巻が出てもBLフラグがまったく立たない「匂い系」な“バディもの”を連載しています。しかも心霊ホラーサスペンス。これは人気作家だけに許されるコペルニクス的転回、いや展開。小さい頃から霊が鮮明に見えてしまう三角康介は、ひょんなことから除霊を生業とする冷川理人の相棒として仕事を手伝うことに。なんと冷川は三角の身体の中の“核心”に触れることで、霊をぶん投げて除霊するのだが、その瞬間、三角は夢精しないのがおかしいくらい気持ちいいと感じる。そんな2人の今後が気になりすぎる。怖くて萌えるって最高のエンタメです。

『さんかく窓の外側は夜』(既刊1巻) ヤマシタトモコ

BLとは言い切れない、除霊ホラーで匂い系なバディマンガ。メガネ男子で地味で真面目、雰囲気に流されやすい三角と、自信家で人間関係に必要なもろもろが欠如している冷川が、二人三脚で霊障と対峙。脇キャラ・殺人課の半澤刑事も素敵。
リブレ出版 629円
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福田里香 (ふくだりか)
お菓子研究家。新刊『まんがキッチン おかわり』(太田出版)と文庫版『まんがキッチン』(文春文庫)が好評発売中。

Column

BLマンガ基礎講座

BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!

2014.10.30(木)
文=福田里香

CREA 2014年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

朝食のおいしい部屋

CREA 2014年11月号

Good Morning Room!
朝食のおいしい部屋

定価780円