2026年9月、元内閣総理大臣・細川護熙氏による龍安寺方丈障壁画全92面(襖絵42面、舞良戸44面、その他6面)が完成した。描かれたのは、全長約112メートルに及ぶ水墨の「雲龍図」。披露されたばかりの、かつてない大きさの雲龍図の全貌に迫った。
龍の誕生から老いまでを9つの場面で表現
披露された雲龍図には、全部で9匹の龍が描かれている。第1から第9まで描かれたそれぞれの龍には、明確なストーリーがあるという。龍安寺の学芸員・大平敏之氏に伺った。
「細川護熙さんの発想で、龍の誕生から成長、老いまでを9つの場面に分けて表現していただきました。想像上の神聖な生き物である龍の“年齢”に着目した点が、この作品の特徴です。 一匹ずつ独立した絵として見るだけでなく、順にたどるとひとつの物語になるんです」
第1の龍が描かれた部屋に足を踏み入れると、正面には、誕生したばかりの龍が姿を見せる。生えだしたばかりの短い角が描かれ、顔周りには、まだ短いひげが生えているようだ。
「龍は想像上の生き物で、その龍に年齢表現を持ち込むという細川さんの発想は、これまで誰も試みてこなかったように思います。第1の龍は、中国の伝説にある『登龍門』——黄河上流にある龍門と呼ばれる大きな滝を登り切った鯉が龍になる——という故事をもとに描かれています。龍はもちろん、奥に見える滝や草木も是非見ていただけたらと思います」
なぜ、禅寺には龍が描かれるのか
雲龍図と言えば、京都の禅寺・妙心寺の法堂に描かれた狩野探幽による《雲龍図》や、京都最古の禅寺である建仁寺の法堂に描かれた小泉淳作による《双龍図》も有名だが、そもそもなぜ、禅寺には龍が描かれるのか。
