2010年代“ヒット作連発”のワケ

 それが2010年代には一変する。ソン・ガンホ主演でノ・ムヒョン大統領の弁護士時代をモデルに描いた『弁護人』(2013年・1100万人)を皮切りに、光州事件を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年・1200万人)、独裁政権の終わりを描いた『1987、ある闘いの真実』(2017年・720万人)、南北の冷戦を描いた『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018年・490万人)など、軍事独裁政権時代や、民主化闘争などを描いた実話でポリティカルな作品が次々とヒットを記録した。

 この頃、韓国映画は金大中時代のように国外市場を見ているのではなく、いかに国内でヒットを出すかを見据えてテーマが決まり、そこに出資が集まっていたのである。その結果、韓国と言えば、国内の実話、近現代史、社会派、批評的なテーマの映画を作る国というイメージが醸成されていく。その延長線で最も象徴的な作品が『パラサイト 半地下の家族』(2019年)であった。

「韓国の観客のおかげで……」

 2010年代後半にはこれらのポリティカル・ノワールの人気も定着し、ウェブトゥーン原作の『神と共に』2部作(2017年、2018年)や、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)などの1000万人超えのブロックバスター映画のヒット作も生まれるようになる。

 また、低予算ながら、企画の面白さでヒットする作品もこの頃には増えてきた。『EXIT』(2019年)は、原因不明のガスから逃れようとする災害パニック映画で、900万人を超える観客が劇場を訪れた。同年公開の『エクストリーム・ジョブ』も1600万人を超える動員数を記録。これは麻薬捜査のために、捜査官がつぶれかけたフライドチキン屋を買い取るが、大繁盛となり本末転倒になってしまうというコメディ映画である。

 思えばこの頃は、韓国映画は政治的、社会的な作品から、アクション、企画で見せる低予算映画、ゾンビなどが出るブロックバスター映画、そして作家性のある監督作など、様々なジャンルの映画でヒットが次々と生まれていたのだった。

 2013年には、人口およそ5000万人の韓国で、年間の映画館来場者数が2億人を初めて突破して、それはコロナ禍になるまで続いた。その後も、国内市場を見て、国内の観客の関心のあるテーマの映画を作っていった結果、冒頭に書いたように『パラサイト 半地下の家族』がカンヌ・アカデミーを席巻することになったのである。アカデミー賞のスピーチや受賞記者会見で、映画のプロデューサーやポン・ジュノ監督が「韓国の観客が妥協せず、厳しい目線で映画を見てくれたおかげで韓国映画が発展した」と語ったことは有名である。

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