1000万人ヒットが一作も現れず……韓国映画低迷期へ

 しかし、2020年以降のコロナ禍を契機に、映画館への客足がピタッと止まってしまい、すでに撮影が完了している映画も、客足が戻るまで公開を待機するような状態になってしまった。

 その結果、ソン・ガンホとイ・ビョンホンという二大スターが出演する航空パニック映画『非常宣言』(2022年)が待機の末に公開されても200万人台の動員数に留まり、ソン・ガンホとヒットメーカーのキム・ジウン監督のタッグの『クモの巣』(2023年)も30万人と、成績はふるわなかった。

 コロナ禍以降の数年間に1000万人を超えたのは、マ・ドンソクの『犯罪都市』シリーズや『ソウルの春』(2023年)、『破墓/パミョ』(2024年)だけとなり、とうとう2025年には1000万人ヒットは一作も現れず、韓国映画はどうなってしまったのか? と思うような日々が続いていたのである。

配信プラットフォームへの人材流出

 コロナ以外の要因もあった。韓国のヒットメーカーである監督、スター俳優は皆、NetflixやDisney+などの配信プラットフォームに移り、大規模な配信映画やドラマに携わることになったのである。『イカゲーム』シリーズのファン・ドンヒョクも、『怪しい彼女』(2014年・865万人)などを撮った映画監督であった。また、ソン・ガンホがデビューして初めてDisney+のドラマに出たことも話題となった。それまで韓国では、映画で活躍する俳優とドラマで活躍する俳優は棲み分けされていた。しかしその垣根はなくなり、予算が潤沢な配信プラットフォームのドラマに活躍の場を求める映画俳優や監督が、当たり前のように増えていった。

 こうした結果、カンヌだけが映画の評価軸ではないものの、2025年にはカンヌ国際映画祭の公式選出作がゼロという異例の事態に陥ったのであった(パク・チャヌクの『しあわせな選択』は、ヴェネチア国際映画コンペティション部門正式出品されたり、韓国国内でも290万人の動員数を記録し、北米での公開も好調で、この年の中ではよいニュースとなった)。日本のSNSや新聞記事などで、「韓国映画が低迷している」と言われていたのは、この頃のことを指しているのである。実際に現場レベルでも落胆の声が相次いでいたことは冒頭に述べたとおりだ。

 しかし、2026年になって、それは変わろうとしている。

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