#3 ハナ

ここがハナ湾。右手の丘がカウイキ、左手は黒い石の海岸が続くワイコロア。

 太陽が東から昇ることを大切に思うのは、私たちが島人だからかもしれない。日本やハワイの島々の文化に流れる共通性を見つけると、その時点ですでに心は旅をはじめる。

 マウイ島の東、夜明けの光が一番最初に訪れる、ハナの村。ハワイ語ではハーナと呼ばれるモクだ。モクとは古来のハワイの人々が山から海に向かって大きく地域を区分けしたもので、マウイ島では12のモクが存在する。特に漁業で栄えたハナの村の中心は、プエオカヒという別名を持つハナ湾。ハワイ島からの侵略者を見張ることのできるこの湾は、カヌーで出陣するには最適な場所でもあり、漁業の基地でもあった。今でもハナ湾を見下ろす丘にはアクレ・ハレとも呼ばれる漁業組合の小屋があり、アクレ(アジ)の群れを見つけるための見張り番がいる。

 ハナは、16世紀の偉大なマウイの王として名を残すピイラニが最終的に完成させたヘイアウ(儀礼の行われる聖なる場所)、ピイラニ・ハレがあることでも知られている。このヘイアウは原型をとどめて残っているハワイのヘイアウのなかでは最も古く、大きなもの。また、ハナは、ハワイ王国の初代の王となったカメハメハ王の妻、カアフマヌ女王の生誕地でもある。神々と王族、聖なる存在に結びつくこの地は、今でもハワイの人々にとって特別な場所だ。

 ハナ湾に向かって右側の丘がカウイキ。入り江に立って見上げると、切り立った崖面が迫る。海に面した崖の下に、美しい赤い砂で知られる小さなカイハルル・ビーチがあるが、そこはマウイ島のなかで、日の出の光が最初に差し込む場所。東雲色の空気のたちこめるハナの村を歩き、朝日を思う存分に浴びると、生まれ変わるような気分になる。


【Access & Advice】
カフルイ空港からパイア方面へ、ハナ・ハイウェイを約2時間半から3時間でハナまでドライブ。島の北側の海沿いのドライブは絶景が続く。舗装はされているが、曲がりくねった細い山道で1車線の橋も多いので運転に注意。大自然のなか、いくつもの滝、花々を見ながらゆっくり行こう。ハナ湾やハモア・ビーチで海を楽しみ、ハセガワ・ジェネラルストアやハナ・ランチストアで買い物するのもよし、旧ホテル・ハナ・マウイとして知られるホテル、トラヴァーサ・ハナには、ハナ在住アーティストの作品を集めたギャラリーもある。

神宮寺愛(じんぐうじ あい)
ライター・コーディネーター・翻訳(英語・ハワイ語)・フラダンサー。出版社勤務後、フリーランスになり、日本文化とハワイ文化に親しむべく、学びの日々を続けてマウイ島在住14年目。13歳の娘とイタリア系アメリカ人のパートナーとの三人暮らし。雑誌への寄稿多数、著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社)など。

2014.08.20(水)
文・撮影=神宮寺愛