ポリネシア初のワイン醸造所があるポリネシア最大のランギロア環礁

 ファカラバ島を後にしてクルーズ3日目に訪れたのは、ツアモツ諸島のランギロア島。地元の言葉で“広大な空”を意味するとおり、高峰はなく、海面近くの小島が連なるフランス領ポリネシア最大の環礁です。そのサイズは周囲200キロメートル! とはいえ、ツーリストが訪れるのは中心地アヴァトル村くらい。船もアヴァトル村の沖に停泊します。

 アヴァトル村のあるモツ(小島)は長さ約15キロメートルと、自転車で回るのにちょうど良さそうな広さ。それにお目当てのワイン醸造所「ドメーヌ・ド・ドミニク・オロワ」に立ち寄りたいこともあり、エクスカーションに参加せずに、自力で回ることにしました。

念願のワインを手に入れたけれど……

 ホテル・キアオラ・リゾート&スパで自転車を調達し、島の探検のはじまりです。

 ペダルを勢いよくこぎながら、モツの東端であるオホツ埠頭へ、そして夕方にイルカの群れがジャンプするティプタパス前を通り過ぎ、ラグーン沿いを進みます。この頃はまだ天候がどうにかもっていました。そして10キロほど走り、「ドメーヌ・ド・ドミニク・オロワ」に到着。

 モツでは世界で唯一のワイン醸造所がワイン造りの挑戦に取り組んだのは、1997年のこと。3万平方メートルの土地にブドウを植え付け、2000年には収穫した50キロのブドウからポリネシア初のワインが誕生しました。

 それから研究を重ね、現在育てているブドウはカリニャン赤、イタリア、ミュスカ・ダンブールの3種。サンゴの土壌であること、潮風に洗われていることから、ミネラルを感じる、柑橘やエキゾチックなフルーツ感のある味わいとか。また、太陽光がたっぷり降り注ぐ土地柄、ブドウは5カ月で実り、年に2回収穫が可能なのも特徴です。

 午後4時からのテイスティングは出航に間に合わないので、今回は購入のみ。ロゼ1本を仕入れました。さぁ船に戻ろうと自転車の向きを変えたところで、突然、バケツをひっくり返したような大雨が降り始めました。

 しばらく木陰で雨宿りをしていましたが、止む気配はありません。雨で島が溶けてしまうのではないかと思うほど降り続きました。購入したワインの紙袋は底が抜け、洋服もずぶ濡れ。ここまで濡れると、雨宿りする意味もなく、けれど激しい雨のために前が向けないので、自転車を押して歩くことにしました。

 3キロくらい歩いた頃でしょうか。小さなスーパーマーケットに立ち寄ると、若いカップルが、「どこへ行くの? 乗っていけば?」と声をかけてくれました。まさに救いの神あり、とばかりに、ありがたくピックアップトラックの荷台に乗ろうとしたら、「いいから、座席にどうぞ」と。ずぶ濡れの旅人に、シートが濡れることも気にせずに……。

 雨の中、大切に抱えていたワインは、まだ封を開けていません。心やさしきカップルを思い出しつつ、味わおうと思います。

取材協力

ポール ゴーギャン クルーズ

https://www.pgcruises.com/

エア タヒチ ヌイ

https://jp.airtahitinui.com/

タヒチ観光局

https://www.tahititourisme.jp/

 

古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること35年あまり。旅行ライターが旅を提案する手配旅行会社「トラベルライターズ」を運営。
●Instagram @chieko_koseki