#014 Varadero
バラデロ(キューバ)
1961年以来、まるで時が止まったような街の風景
カリブ海と大西洋に囲まれた、カリブ海最大の島キューバ。世界の海をめぐり渡ったコロンブスでさえキューバ上陸時に「人間の目が見た最大の美」と絶賛したという逸話からも、その美しさがいかに並はずれているかが、想像できることでしょう。そして、人気ビーチエリアのバラデロを前にすれば、コロンブスの言葉が決して過言ではないと、納得できるはずです。
キューバはマイアミからわずか150キロメートル南下した位置。距離的にはアメリカのすぐそばにありながら、この二国間には50年以上にわたって深い亀裂が走っています。そのため、キューバには国交断絶がはじまった1961年以来、まるで時が止まったような街の風景が残されています。
首都ハバナの旧市街では、ゴシック調などの石造りの建物が立ち並ぶ中を、50年代のクラシックカーがガシャガシャと盛大な音を立てながら行き交っています。流線形&カラフルな色合いの昔懐かしいアメ車、それが愛好家による趣味の車ではなく、どれもが現役なのです。
細い石畳の路地裏に入ってみると、道路の両脇にアイアンレースを施したスペイン・コロニアル調の建物が続き、どこからともなく陽気なソンの調べが。音をたどっていくと、小さなカウンター・バーで3~4人編成のバンドが生演奏していたり……。ふと、今は21世紀だったっけ? と、誰かに確認したくなるほど。
2014.07.12(土)
文・撮影=古関千恵子