納豆菌にとって居心地の良い稲藁発酵環境
大阪の「らくだ坂納豆工房」の伊戸川さんの元に訪問したのは、およそ4年前。Table to Farmがまだホームページもなく、自分たちの活動の紹介もままならない状況下の中でした。伊戸川さんもまた、創業何十年の歴史ある納豆メーカー、というわけではなく、ご自身で営まれていた居酒屋で自家製の名物納豆を提供していたことが始まり。常連のお客様から購入の要望をいただいていた中、コロナ禍で店を休まざるを得ない時期ができたことをきっかけに、一年発起、納豆の製造免許を取得し、事業転換をされたいったのです。
お会いしたのが、ちょうどどちらも創業してまもないタイミングだった境遇もあり、僕たちの無知を受け入れてくださりながら、何度もお話を聞かせていただいた時間がありました。おかげで、僕たちは『素の味』という考え方の軸を、納豆を通して学びながら、つくりあげていける時間となったのです。
北海道の「道南平塚食品」の納豆は、人工的に優良な菌株を選定する純粋培養納豆菌も併用し、稲藁に生息する納豆菌との両方が影響を与えながら発酵されています。稲藁は納豆菌にとっての快適な発酵環境になっている、と捉えられるとも思いました。
そして、香川県の小豆島で、木桶仕込みで醤油を仕込む「ヤマロク醤油」の蔵元・山本康夫さんを訪れた時のことです。木桶で仕込む醤油がおいしいのはどういった理由があるのかと聞いた時、「木桶の環境は、醤油に欠かせない微生物たちにとって快適な環境を用意すること」とおっしゃっていたのです。微生物にとっての居心地は、そのまま発酵のパフォーマンスに影響している。それは、納豆も同じなのでした。
