Tさんが大量に抱えてきたもの

 大声をあげたTさんを見かねた他のメンバーは、彼を四隅から引き剥がすように強引に外に連れ出しました。

「何すんですか!? やめてくださいよ!!」

 無理やり車に連れ込んで急発進させてからも、Tさんは「答えてくれていたんですよ! 俺の身の丈に合った幸せについて! それなのになんですか本当!!」と意味不明なことを喚き散らしていたそうです。

 下手に反論せず適当に相槌を打ち、彼を最寄りの駅で放るように降ろしたKさんたち。その日は誰とも言わず解散になりました。

◆◆◆

 結局、週が明けてもTさんは大学に現れず、皆彼に何かがあったことは予感しつつも、誰もその事実に向き合うのが怖くて連絡を取れないでいました。しかし、数日後にKさんたちが食堂でお昼を食べていると、Tさんの知り合いの後輩がふらりと声をかけてきたのです。

「あ、先輩たち最近Tと遊んでないみたいですけど、なんかあったんですか?」

「Tのこと見かけたの!?」

 詰め寄る一同に驚いた様子の後輩。彼が語ったところによると、先日大学の帰りに立ち寄ったコンビニの裏手で偶然Tさんを見かけたというのです。

『最近、連絡返さないじゃん。K先輩たちとも一緒にいないみたいだし、何してたの?』

『人にはそれぞれの幸せがあるからさ、身の丈に合わせなきゃいけないんだよ』

 そう答えたTさんの腕には、大量のダンボールが抱えられていたそうです。

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次の記事に続く 「喪服はこっちで用意しているから」……通話の向こうに聞...

Column

禍話

2016年からライブ配信サービス「TwitCasting」で放送されている怪談チャンネル「禍話(まがばなし)」。北九州で書店員をしている語り手のかぁなっきさんと、その後輩であり映画ライターとして活躍中の加藤よしきさんの織りなす珠玉の怪談たちは、一度聞いたら記憶に焼き付いてしまう不気味なものばかりです。