姿を消したTさん
「まあ、ニッチなスポットってのも、こんなもんなんだろうなぁ」
「そうだな……しゃーなしだな! 帰ろうぜ! うまいもんでも食おう」
ため息交じりにすごすごと家を出ていくKさんたち。
車のところに戻ったとき、あることに気がついたそうです。
「あれ、Tは?」
今日が初参戦だった後輩のTさんの姿がないのです。
「おーい!」
少々大きな声で辺りを見回しながら声をかけたのですが見つからず、じわりと一同の心に不安がこみ上げてきました。
「まさか……」
何かに気がつき駆け出したKさんのあとを追うように、ハタと気づき駆け出す一同。
薄暗い家の中。予想通りTさんはあの和室に入ったまま動いていなかったのです。
「おい、お前何してんだよ……帰る――」
「へー、そうなんですねー」
Tさんは、こちらに背を向けて部屋の隅に向かって1人で相槌を打っていました。
「なるほどぉー。身の丈に合わせて。はぁー」
Tさんはおもむろに歩き出すと、部屋の隅におでこをゴン……とくっつけたのです。
「なるほどねぇー、分かる気がしますよ、幸せの形はそれぞれですもんねぇー」
「おい、何してんだよ……お前大丈夫か!」
Kさんが意を決して彼の肩を掴んで振り向かせると、Tさんはイラついた顔をこちらに向けました。
「なに…やめてくださいよ! 今、お家の人と話してるでしょ! 見てわかんないんですか!? 色々な幸せの形があるんですよ!!」
「お、お家の人って……」
「だから身の丈に合わせて皆頑張っているんですよ!!」










