曲線の表現と向き合い続ける、榎本さんのものづくり

 デザイナーの榎本さんは、1996年生まれ。弱冠24歳でスタートしたバッグブランド、ノリ エノモトは来年5周年を迎えます。現在はオンラインストアのほか、百貨店や美術館を中心に販売しています。

 榎本さんは、共立女子大学で被服学を専攻したのち、文化服装学院で学びを深めました。2020年春に同校を卒業するも、すぐにコロナ禍で自宅待機を余儀なくされます。

「学生時代は自由にものをつくる時間が取れなかったので、巣ごもり期間を活用して、ポーチの制作を始めました。Instagramにアップすると販売を求める声があり、100個作ればすぐに完売してしまうほどの反響がありました」

 その後、現在も所属する株式会社レインボーシェイクでパタンナーとして働き始めると、山田雅之代表にブランドとしての本格的な展開を持ちかけられ、ノリ エノモトは誕生しました。

 ノリ エノモトのバッグや小物のシグネチャーは、曲線のカットと丸い金具のかしめ。ガルブのデザインにも通ずる大きなテーマである曲線の原点は、文化服装学院で服作りを学んだ頃にあったといいます。

「学校では、“針には魂が宿る”の考えのもと、曲がってしまった針はクラスごとに集めて針供養をしてから捨てていました。あるとき集めた針に目をやると、まち針が描く曲線の集合体がとても美しく見えて。

 この曲線が織りなす美しさをデザインとして入れ込みたいけれど、洋服ではキャンパスとして大きすぎる。そこで目を向けたのが、バッグや小物でした」

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